カリンはパパイヤみたいで見映えがいい
 カリンというのは、比較的に果実が成りやすいみたいだ。
果実はパパイヤみたいに、黄色くて大きい。
大変見栄えがいいせいか、庭に植えてある家をたくさん見かけるようになってきた。
黄色くて大きな実がたくさんついている光景は、いかにも豊か、という感じがする。
いっちょ、イラストも描いてみるとするか。

イラスト
オレにしては、うまく描けたような気がする(自画自賛)

 近所のカリンは簡単に育っているように見えたので、オレも植えてみたけど、これが枯れたりして意外と大変!。
「枯りん」どころじゃねーぞ、これはよ!。
事情をもっと詳しく、時間順に述べてみよう。

カリン登場と調査スタート
 田舎のオレんちの近所に、とつじょとして得体のしれない果実が目につくようになったのは、そうだな、十年ぐらい前からだな。
一九八〇年代だ。
でっかい黄色の果実が、木にくっついていたんだ。

 まさかパパイヤ?、いやそんなわけがない、あれは何だ?、というわけで、結局それはカリンと判明した。
まったく、パパイヤみたいだぜ。
イメージ強烈!、見栄え強力!、カリンとはすごいもんだ。
これは食えるんか?。

 そのころオレは果樹の本を読みまくっていたから、おかげで知識が一気に増えた。
カリンは食えない。
なんだそれは?。
「カリンは、のどにいい」とか?。
でもオレ、のどは痛くねえぞ。

 食い気優先のオレとしては、もっと調べてから植えるかどうか決めることにした。
果樹の本で調べたところ、カリンは一本でも実が成るとのこと。
病気にも強くて、無農薬でも育つ、らしい。
ただしシンクイムシには注意、とか。

 でも、シンクイムシって何だ?。
シンをクウんだから、実の芯に食い込む虫か?。
カリンの果実は、果実酒に使われることが多いという。
「カリンの果実はいい香りがするので、部屋に置くと良い」と書いてある本もあった。

 でも香りの話は、すごくうさんくせーな。
なぜなら、友達の家の軒下にカリンが置いてあったんでニオイをかいでみたら、ヘンなニオイだった。
部屋や車内に置いたら、気分悪くなりそうだ。

道ばた観察、マルメロ発見
 自転車旅行で福島県や長野県に行ったときに、道沿いの家々でヘンテコな果実を見つけた。
洋梨みたいな形というか、下ぶくれで、いかにもうまそうな黄色の果実だった。
八月のころだ。
意外なことにそれは信州で「カリン」と呼ばれている果樹だそうで、正式には「マルメロ」というんだそうだ。

 「まるめろ」?、すっごく変な名前!。
元々は西洋渡来の果物とかかんとかで、外国語の発音が元になったため、こんなヘンテコな名前になったらしい(多分)。
カリンとマルメロは、全体的によく似ているみたいだ。
ただし大きな違いとして、このマルメロ(信州名カリン)は、加工すれば食えるらしい。

 信州の観光みやげもの屋では、菓子をよく売ってるみたいだ。
諏訪湖ぞいの道では、街路樹にマルメロの木が使われていたっけ。
でも、オレんちの近所(茨城県)では、マルメロはまったく見かけないけどな。

 オレの近所(茨城県)では、マルメロの木はまったく見かけないけど、しかしだ!、近くの園芸店ではマルメロの苗木を売っていることが近年増えてきた。
買う人いるんか?、店の経営は大丈夫か?、と心配な気もするけど、オレの近所でも、いずれはマルメロの果実を見ることができるだろう。

 一九九九年四月十八日に近くの園芸店で、マルメロの苗木に花が咲いているのを見つけた。
この花が、いかにも洋風でございます!ってな感じで、とってもふっくらしてて、淡いピンクで、大輪で、立派!。
すっげーな、こりゃ花木としてもいいかもよ、という綺麗さだ。

 なにしろ、昨年の売れ残りの苗木にだよ、おしゃれな花がいくつも付いているんだから、咲きやすいのかもしれない。
ただし、マルメロというのは一本では実がなりにくいそうだから、オレは買うつもりはまだないけどな。

近所で観察してからカリン栽培開始
 近所でカリンの木を見つけたときは、オレはよく見るようにしていたよ。
当時オレは自転車によく乗っていたので、止めて観察するのは簡単だ。
車だとこうはいかない。
カリンの果実はよく成っているものが多く、なかなかの豊産ぶりだ。

 フムフム、実は成りやすいんだな。
カリンの木は、ポプラみたいにヒョロヒョロッと伸びた長い樹形のものが多かった。
そのため地面の占有面積は一坪以内のものが多く、庭が狭くても植えることは可能みたいだ。

写真
2001年11月9日撮影

 樹の形、果実の色や成り具合、などなど、カリンというのは全体的に見栄えがする果樹のようで、庭に植えるのに向いているみたいだ。
なんといってもパパイヤみたいな巨大な果実が印象的だ。
ウ〜ム、なかなか有望だな。

 オレはカリンを植えるかどうか考えていたが、一本ぐらいなら植えてもいい、と思えてきた。
よし、植えよう!。
というわけで、苗木を一本購入した。
ちょうどそのころ、親が別ルートでカリンの苗木を一本買ってきたので、結局カリンは二本育てることになった。

 カリンの苗木は、二本とも自宅の庭に植えた。
一年目はわりと順調に育った。
が、問題は二年目だ。
二年目に、一本があっさり枯れてしまった。

 葉っぱが赤茶けて、そのまま枯れてしまった。
原因はよくわからん。
でも、まあ、果樹が枯れてしまうことは時々あることだし、まあ〜仕方ないや。
あと一本は順調に育っているんだから、大丈夫だ。

 でも一本だけじゃ不安ということで、カリンの苗木を新しく一本購入しなおした。
今度は畑に植えた。
自宅の庭と、畑にそれぞれ一本ずつ、というわけだ。
これでよし、と。

カリン初開花と根元に虫が!
 そして二〜三年たったろうか、自宅のカリンは植えてから四〜五年たっていた。
そろそろ実が成ってもいいころだ。
はたして一九九六年、少しだけどカリンの花が咲いた。

 花はピンク色というか赤っぽい色で、近くでみると大輪で、なかなかきれいだ。
花は、ややまばらに咲く感じなので、鑑賞用の花木とするのは無理かもしれないな。
早く成ってくれ!。
この年は、なにしろ花の数がほんの少しだったためか、結実なし。

 確かこの年の夏だと思うが、カリンの根元に黒ずんだオガクズが付いていたので取り除いたら、虫にだいぶ食われていた!ことが判明した。
なんだかヤベーぞ!。
棒で突っついて徹底的にほじったら、幹の根元の一周のうち三分の二ほどが、皮がなくなってしまった。

 なんだこりゃあ〜!。
カミキリ虫の幼虫みたいなのが、木の根元に食い込んでいるらしかった。
とりあえ汚れたオガクズを丹念に取り除いて、そのあとに、穴ボコへキンチョールを十分に噴霧した。
そしたら駆除できたようだ。

 その後は発育よし。
この年の夏は、枝がいっそうよく伸びた。
枝葉の繁りも充実してきた。
この様子だと、来年(一九九七年)は収穫が期待できそうだ!。

カリン枯りんなよ
 果たして、次の年(一九九七年)は開花百以上。
花の色がハデ気味で、なかなかキレイな木じゃんか。
そうはいっても桜ほどではなく、花の付き具合はやっぱりスカスカしているが、見方によってはまあまあキレイな木だ。
早く実を付けてくれい!。

 これだけ咲いたんだから、結実まちがいなしだ。
ところが!、予想外なことに強風により、このカリンは倒木してしまった。
一九九七年五月八日のことだ。

 木の根元が虫にかじられていたためもあって、根元が弱かったせいもあるらしかった。
オレは倒れたカリンを立てて植え直したけど、結局、枯れてしまった。
このカリン、結局一つも収穫できず。
なんてこったい!。

 一方、畑に植えたカリンは、いかに?。
畑の隅で、ほとんど日陰の場所に植えたが、なにしろ日照不足のため明らかに発育不調。
だって、日当りのいい場所なんて、もうなかったしよ。
それでもこのカリンはヒョロヒョロと伸びた。
幹の太さは一〜二センチほど。

 だけど、幹に虫が食い込むのなんのって、穴の直径は一ミリほどだが、木クズが出てくるんだ。
穴ボコを棒でつついても退治できず、仕方なくその幹は切って、別の枝を幹として伸ばした。
これで安心、と思ったが、今度は新しい幹からも木クズが出てきた。

コンチュクショー
 針金を突っ込もうにも、なにしろ直径一ミリほどの小さな穴だし、幹自体が細いから穴ボコはすぐ直角に曲がっているから、針金がまっすぐ入らねえ。
針金を差し込んで殺虫なんて、とてもじゃないけどできやしねえぞ、これはよ!。

 これじゃ仕方ないから、オレはキンチョールを家から持ってきた。
で、穴ボコ内部に至近距離からブシューッと吹き込んで、これで殺虫した。
針金と違って、キンチョールは効果テキメンで、じつによく効く。

 が、しばらくたつと、また新しく別の箇所から木クズが出てきた。
オレはキンチョールをいつも持っているわけじゃないので、木クズを発見しても手ぶらのときは、どうすることもできやしねえ。

 あっちからもこっちからも木クズ続々噴出、モコモコという感じで、次から次へと発生して、しかも手が届かない高い枝からも木クズが出てきた。
もう、こうなっては手におえねえや、どうすっか、コンチュクショー!(こん畜生+昆虫、を合わせたシャレ)。
まったく、この虫はよく発生した。

 このカリンの木は、それでもなんとか伸びて、予想外なことに開花までしてしまった。
一九九七年と一九九八年のことだったかな。
実がなることはあまり期待してなかったけど、少しとはいえ開花したのはうれしかったな。
実は成らなかったけど、ま、仕方ねえか。

 「シンクイムシ」というのは、果実に食い込む虫を指すようだが、木の幹を食う虫のこともあるようだ。
カリンの実は虫が入りやすいらしいが、幹もこれほどやられるとはオレは予想外だった。
植えた場所が日陰だから、木が弱って害虫の被害が大きくなったんだろうな。

カリン枯りんじゃねーぞ
 この虫食いカリンだが、日当たりが悪い場所だから、将来がとても危なっかしい。
いつまでもこまごまと面倒みてらんねーし。
この木はもうヤメ、ということで、新しく植え直すことにした。

 カリン苗木を二本追加購入し、ろくに成らないスモモをちょん切って、二本のカリン苗木を畑に植えた。
一九九八年の春のことだ。
今度は日当たりの良い場所に、カリンを植えることにした。

 新しいカリン苗木に将来を託すことにして、虫食いカリンもノコギリで切っちまった。
幹が細いから十秒ぐらいで切り終わって、五年ぐらい一応育てたであろうか、じつにあっけないもんだ。
オレの気持ちは、後悔やタメライや今後の計画など、あ〜だ、こ〜だ、いろんな思いが交錯していたが、えーい、やかましい!。
さっさと成らんかい!、成らねえヤツは切っちまうど!。

 二本の新しいカリンは、オドシが効いたか、いや、日当りが良かったのがやっぱり効果大だな、その年の初夏からグングン育ちはじめた。
だが、夏本番は暑い。
夏の間、雑草ボサボサにしていたら(つまりサボった)、二本のカリンのうち一本が枯れてしまっていた。
根元から倒れていて、見たら、またしても虫が根元のまわりをぐるりとかじってあった。

 で、あっけなく枯れて、折れていたというわけだ。
またかよ〜!。
西暦二〇〇〇年の時点において、状況としては、カリンはまあまあの発育ぶり。
初収穫はまだだが、今度は多分大丈夫だと思っているところだ。

煮ても焼いても食えない果実?
 成った成ったカリンが成った。
成ったのは二〇〇二年のこと。
パパイヤ型で、オレはこのタイプのものが前から欲しかったんだよなー。
昔の園芸カタログで、「パパイヤカリン」というものが紹介されていた。

 カリンの果実の形が、パパイヤによく似た苗木が売られていて、そいつが欲しかった。
でも、結局買えなくて、悔しかった。
仕方なく近所から、何の変哲もない平凡なカリン苗木を買って育ててきたら、これが初めて収穫できたんだ。
偶然なことにパパイヤ型だ。
ラッキー!。

写真
初めて収穫したカリン 2002年11月9日撮影

 カリンには丸型もあるようだが、なにしろ食えない果実だから、果形でこんな楽しみがあってもいい。
食えない果実?。
そう、煮ても焼いても食えない、という困った果実ちゃんなのだ。
カリンの利用法といえば、通常は煮詰めたり焼酎漬けにすれば薬効?成分を利用することができるがねー。

カリンのカタチ
 夏がくれば思い出す、はるかな仰せたことは、親戚の甥っ子に「この実なんの実だと思う?」と訊ねたこと。
夏のカリンはまだ黄緑色で、ちょっと疑問な果実。
なんて言うかな?と楽しみにしていると「マンゴー!」と元気よく答えたので、まあ、そりゃ、黄緑の姿はフィリピン産マンゴーによく似た形だがな。

 パパイヤという返事は無理だったか。
でもいいや、初めてのカリン収穫、苦節十数年。
採れた果実は、五〜六個かな。

 カリンは、果実の表面に茶色の大きなシミができやすい果実で、これは赤星病の害によるものだ。
写真でいえば、画像右下の二個で、茶色に窪んでいるのは被害個所。
被害が特にひどい果実は、夏に取って捨てて、良い果実だけを木に残しておいたけどね。

 美しい果実を得るなら、袋をかけたり、農薬散布をすればいいらしいが、大量に収穫できても持て余す果実かもしれないので、オレは〜、一応放任でもいいや。

※カリンは食べられないと思っていたが、煮たり電子レンジで加熱すると食べられるらしい。

作者を誉めるメールを送ってくれえ〜!
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