成らぬ柿の木が、強剪定で成った
 うちにあった柿の大木だが、収穫ほとんど無し、の状態になっていた。
実は一応成るが、夏の終わりごろに、ほとんど全部落ちてしまう。
収穫前に落ちてグチャグチャになるばかり。

 毎年こうだ。
なんでだー?。
オレが子供のころは、ちゃんと成っていたのによ。

 なになに、文献で調べると、その柿は甲州百目という大型の渋柿らしく、これは適地でないところでは後期落果が多いらしい。
そのせいか?。
ヘタムシ(カキミガともいい、字は柿実蛾か?)の被害と混同しやすいという。

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下垂枝が多く、こんな感じ

 放任だったから手入れすればいいんだと思ったが、剪定しようが、落ちた実を片付けて清潔にしようが、木の皮をけずろうが、ほとんど効果なし。
困り果てた。
なお、今になって思えば、ヘタムシの害がメインだったようだが。

ノコギリでゴリゴリ切り始めた
 まあ、原因はおぼろげながらにわかってきて、対策がだな、気候風土を変えるとか柿の大木のドタマから薬品をジャージャーかけるとか、そんなこと、できもしねえってんだ。
で、収穫ゼロが、この年も次の年もその次の年も続いたから、嫌になるね。

 まったく、だんだんシビレを切らしてきて、どうせ毎年ゼロなんだからこの不満エネルギーを元手として、切ってしまえ!と決意した。

 切るのはもったいないけど、ほとんど収穫がないんだから、しょうがないじゃないか。
ぶっとい柿の幹を、ゴリゴリ切り始めることを開始した。
ノコギリでな。

 なにしろ大木であるから、いきなり根元から切ろうものなら、この大木がドーンと倒れてしまって、隣接した家屋の軒先を壊してしまうのが確実。
で、仕方ないから、ハシゴに登って、木のてっぺんの方から少しずつ切って降ろす、という作業をせざるをえない。
あーあ、疲れるし、危ないよう。

 ハシゴにのぼって、固い柿の幹を切っていくのは、もう疲れること甚だしい。
てっぺんの方から、上は全部切って、今度は、だんだん下の幹の方まで切っていく。
とはいえ、幹が太さ二十〜三十センチもあるので、長さ一メートルくらいずつ切っていくのだが、五センチぐらいの枝ならまだいいが、太い幹は切りきれない。

 太さ三十センチもの幹を切っていくような太さに部分にさしかかるに至って、とうとうオレは投げ出した。
もういいや!。
で、残した。
というわけで、柿は幹だけの、電信柱のような姿になってしまった。

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太さ三十センチ、高さ五メートルほどの、丸太ン棒の姿になった

意外な展開が始まった
 で、放っておいた。
そしたらさ、暖かい時期になって、幹から新しい枝がたくさん生えてきた。
徒長枝というものだろうか(不定芽?)。
柿というのは、こういう枝が出やすいね。

 それも放っておいた。
それは我ながら怠慢癖が重症かもしれないが、そしたらさ、なんと翌年にたくさんの柿の実が成って、ちゃんと熟した!。
それまで十年以上もヘタムシの被害で収穫壊滅だったカキの木が、だよ。

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この枝に花芽が付き、収穫あり。

 針葉樹のような樹形になって、木の面積も小さくおさえることができ、カキの枝もどれも新しく勢いのある上向きだけの枝となり、結実も良好になった。

 さらに次の年だ。
これまた順調な発育と、収穫だ!。

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 怠慢が変じて幸運を呼ぶ、と、いうべきか。
この木はその後数年して、物置の新築で完全に伐採されてしまうというまた非運に転じてしまうのだが、そのころ、オレが植えた別の柿の木がたくさん成り始めていたから、収穫は木は違うとはいえ、オレ個人としては採れるようになっていた。

 この今ある別の柿の木なんだが、それが、ほとんど採れない年もあってな。
それに柿の実が小さい品種だから、オレが体得した電信柱のような強剪定をやるなら、良好に転じることができるはずなんだが…、柿が一本しかないと、どうしても強剪定ができない。

 知っていても、一本だけだと、どうしてもやることができないんだ、意外なことに。
剪定した一年は、必ず収穫皆無になるし。
せめて、二本あれば、代わりばんこに強剪定できるのだけど、まだ二本目を植えていない。

追記:後日二本目を植えて、二〇〇八年に初収穫できた。

※裏付け
最新の技術でも、このような柿の剪定の仕方があるので、参考までに。
カキ「太秋」の主幹形整枝

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