草で草を制す?クローバー草生
 草取りは、庭は我慢辛抱でやれるかもしれないが、離れた畑ではハンパじゃないくらいに雑草が生える。
ひろ〜い面積に、ギッシリと。
どうすっか?、こりゃあ〜。

写真
ビワの木の高さは一メートルくらい
1998年7月6日撮影

 そもそも、オレは雑草取りがイヤでたまらんから、野菜よりも果樹の方に力を入れているんだ。
野菜が雑草に埋もれればアウトだが、果樹は雑草よりも背丈が高いから、地面に雑草がいくら茂ろうと、果樹本体さえ日当たり充分なら問題ないだろうよ。

 そうはいっても雑草がうっそうと生い茂る畑じゃ、立ち入ることすらウザったくなってくる。
しょうがないから、雑草対策は一応やってきたよ。
やんなくてもいいけど、やってきたという、長々と続く「わが畑における雑草との闘争」、これから述べてみよう。

クローバーで草を制す?
 今から十年以上前のことだ。
「わら一本の革命」という本の中で「クローバー草生」といって、草で草を制する方法を知った(草生=そうせい、と読むらしい)。
クローバーをぎっしり生やすことによって、他の雑草の成長を阻害して、クローバー一面になって除草が不要同然になるという。

 しかも豆科のクローバーは根粒菌によって窒素肥料を作るので、無除草、無肥料で果樹が栽培できるようになるそうだ。
驚異の農法だっ!と、オレは強烈に感動したね。

 福岡正信さんによる「自然農法」と呼ばれる農法で、「無III 実践編」に詳しい内容が載っていた。
このとおりにやりさえすれば、苦手な草取りはやらなくて済むはずだ。
よ〜し、やろう!。
オレの果樹栽培は、自然農法に沿ってやることにして、クローバー草生もマネすることにした。

 自然農法によると、クローバーは「ラジノクローバー」といって、野外で見かける普通の「ホワイトクローバー」とは、少々違うことがわかった。
よく似たものだが、ラジノクローバーの方が大型で強力のようだ。
オレは種苗店に注文して、「ラジノクローバー」のタネを幸いなことに買うことができた。

 秋に蒔くと良いそうだが、待ちきれなくて春に蒔いてみた。
小さな芽は生えた。
が!、雑草も急激に育ってクローバーは埋もれてしまい、雑草が覆い尽くしてあっさり失敗した。

クローバー草生の創世期
 そこで次は、ちゃんと秋に蒔いてみた。
地面を見ると、クローバーの芽が小さいながらも生えていた。
冬の間はあまり伸びなかったが、春になって、クローバーは急に伸びてきた。

 が、雑草も急激に育って、結局はまた雑草だらけになってしまった。
むむ、失敗か。
初年度は、前年までの雑草のタネや宿根草が残っていて、クローバーが負けやすいので、丁寧な管理が必要らしい。

 自然農法の解説では、クローバーと雑草が混生状態のときに、人の手を加えてクローバーの発育を必ず助けなければならないという。
オレは管理がイマイチだったんだな、と思った。
自然農法の本によると、クローバーと雑草が混生状態において「刈り取る」ことが大事らしい。

 刈り取りや踏み付けを繰り返すと、雑草は弱っていくが、クローバーは強いので、だんだんクローバーだけになるという。
フムフム、そうか。
そこで、クローバーと雑草が混生状態において、カマで刈り取ってみた。

 刈り跡からは、クローバーが再生してきた。
が、雑草のひこばえ発育も、これまた早い。
結局は雑草園に戻ってしまった。
失敗だ!。

苦労のクローバー
 観察すると、刈り取った草を投げ散らかしておくと、そこは枯れ草がかぶさった状態となって、クローバーが新しく伸びにくいようだ。
そこで、刈った草は、別の場所にまとめて置いてみた。
経過は、クローバーの再生はまばらで、密生状態とならなかった。

 雑草が生えだして、雑草の天下となってしまった!。
また失敗か!。
雑草と一緒にクローバーも刈り取るから、クローバーも弱ってしまうんだろう、とオレは考えた。
今度は雑草を一本ずつ抜いて、クローバーだけ残してみた。

 雑草抜きの作業過程において、踏んづけたりして、クローバーの茎(柄)は横倒し状態になってしまうものが多かった。
貧相ながらも、クローバーだけ生えている状態にしたが、地面に日光があたって、そのうち雑草がひんぱんに生えてきた。

 たくさん生えてきた雑草を取りきれなくなって、結局、雑草園にまたもや逆戻りしてしまった。
またまた失敗だ!。
失敗に懲りてきたオレは、仕方ないからアタマを使って考えた。
自然農法の本に書いてある通りでは対処できんぞ、こりゃ。

 オレなりに工夫しなくては!。
自然農法の本によると、クローバーが密生することによって、地表付近だけが日陰となって、雑草の発芽・初期生育を阻害するという原理だった。
よく観察すると、そもそもオレの畑では、クローバーの再生力が弱くて密生状態になりにくい。

 だから、地面に日があたって、雑草の発芽・初期生育が行われてしまう。
クローバーの勢力が弱いのは、「日照不足」が主な原因じゃないか、と思った。
果樹の下などの「日陰」は、クローバーの発育が鈍ることは、自然農法の本でも認めていた。

クローバー冬の陣
 じゃあ、オレの畑で、日当たりが良い場所は大丈夫かというと、これが大丈夫じゃない。
このような場所では、クローバーも発育旺盛だが、雑草の発育もまた猛烈だ。
クローバーの層を突き抜けて、次々と雑草が生えてしまって、どうしても雑草を制圧できない。
どうすっか?。

 そもそも雑草が多すぎることが問題なんだ、とオレは判断した。
そこで、秋の種まきのときに全面的に草抜きして、裸地にしてみた。
草抜きは大変で疲れるし、指の爪は真っ黒だ。

 くたびれながらも、こうして黒い地面にクローバーを種まきしたところ、ちっちゃなクローバーがたくさん生えてきたのが確認できた。
冬になって一般の雑草は枯れたが、常緑のクローバーは日光を浴びて、ジリジリと増え始めていた。
オレのところは関東地方で、冬は晴天の日が続いて、雪も積もらないという気候だ。

 で、冬にじりじり育つクローバーを見て、なんとか一面に増えてくれと思うんだが、ある日、急にクローバーが減っていた。
近くには、正露丸みたいな粒が落ちていた。
は?、と眺めたら、どうやらこれは野ウサギのフンと判明した。

写真
那須高原でたまたま撮影できた夏の野ウサギ 2005年7月3日撮影

 クローバーは食べられてしまったわけだ。
飼いウサギのようなノンビリ者とは違って、野ウサギは逃げ足がものすごく早いので、どうすることもできんぞ。
隣接する山林から来たわけで、結局クローバーはあらかた食べられてしまった。

クローバー夏の陣
 が、春になって、それでも一応生き延びたクローバーが急激に生い茂った。
スギナもごっそり生えたが、五月ごろはクローバーがかなりの優勢に生い茂った。
ひょっとして、うまくいくかもよ、と期待した。

 しかし梅雨時になって、雨が降って水滴で重くなって、クローバーが横倒しになってしまいがちになった。
クローバーの密生状態も崩れて、隙間から雑草が生えだした。
最初は雑草を一本一本抜き取っていたが、六月になるとクローバーの発育が、だんだん弱くなってきた。
曇天のため日照不足かと思ったが、雑草が次々に生えてきて、だんだん取りきれなくなってきた。

 いざ梅雨明けして、暑い盛夏になった。
雑草が猛烈な発育を始めた。
クローバーでは抑え切きれない状態になって、雑草だらけに復活してしまった。
暑くてもうやってられんぞっ!。
肝心の夏の雑草モサモサのときに、クローバーが役立っていねえ!。

 秋になって、今度こそクローバーで覆い尽くそうと再び丁寧に管理しても、肝心のクローバーの発育が強くない。
秋の発育はイマイチのようだ。
密生でなく隙間がちのままで、あいかわらず雑草が生えてくる状態だ。

 一年を通して、クローバーはどうかというと、あってもなくても無力な状態となっていた。
毎年生きのびているのは見えていたが、クローバーの勢力が良いのは、いつも春の一時期だけ。
夏や秋は、雑草に圧倒されてしまって、まったく存在感なし。
これの毎年くりかえし。
もう知らんぞっ!。

つづく

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