ナイロンコードカッター ナイロン糸で草を刈る
 草刈りについて知り合いのお爺さんと「大変だよねえ」と共通の話題になり、刈り払い機の話になった。
刈り払い機というのは、あの、エンジン音うならせて、長い柄の先に回転する刃が付いてて、草を刈る機械のこと。
お爺さんが「先端をポンと叩くと糸が出てくるタイプか?」
というので、なんですかそれは?。

 金属の回転ノコギリ刃ではなく、ナイロンコードで草を刈る、というものが世の中にあって、その製品のなかで、叩くと糸(コード)が繰り出されるものがあるんだ。
雑草を鋭利な刃物で切る、わけじゃなく、ナイロン糸を猛スピードで振り回すことによってビシビシ切る、というのが、まったく思い付くことすら難しい画期的な製品だと思うね。
※ナイロン糸は、太さ直径二ミリくらいある。

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お爺さんが使っているタイプのもの(新品)
刈り払い機の先端に取り付けて、親指の先端にある出っ張り部分
を地面に叩くと、ナイロンコードが五センチほど繰り出される。
2002年9月26日撮影

 ナイロンコード刃のことは、以前から一応知っていた。
もうだいぶ前、一九九四年のことだと思うが、道路沿いの草刈りをやっていた作業の人と会話する機会があって、そのときナイロンコードを付けた刈り払い機を初めて見せてもらった。
「ガードレールの根元の草までキレイに切れる」という。

 従来通りの一般的な「金属の刃」だと、草に隠れた鉄柱にぶつけると「ガキーン!」とすさまじい音と衝撃があって、刃はひん曲がるし、危ないこともあって、障害物を見つけたらスレスレで刈っていくのが普通だ。
スレスレというのは結構難しくて、時間も神経も使うし、それに、障害物に密着した草があると少し残ってしまう。

 それが、ナイロンコードなら「障害物にぶつけながら刈る」ことができる。
鉄柱だろうが、コンクリートだろうが、ナイロンコードをビシバシ当てながら、密着した草もきっちり刈り取れる。
作業の人は「糸がすぐにすり減っちゃうんだよな」と言っていたから、コードの消耗が大きいようで、すり減ったコードを再セットする作業がいちいちめんどくさいようだった。

 「小石は飛び散って危ないし、草のカスが飛び散って全身カスまみれになる」という話も後で聞くことができた。
オレは果樹畑の草刈りが大変で、何か新しい方法はないかと考えていたこともあって、しばらくしてからナイロンコードの機具を買って取り付けてみた。
破片の飛び散りに注意しながら用心深く使ったが、これがな、それまで使っていた金属刃よりも、切れ味が余計に悪くなったカンジ!。

 頭に来たオレは、ナイロンコード刃は失敗作と判断して、捨てちまって、使っていなかったんだ。
だからお爺さんがナイロンコードの刈り払い機を今でも使って、広い面積を処理しているという話が、すぐには信じられなかった。

雑草ミンチのチップ
 お爺さんが刈った雑草地を見ると、まるで芝生のように美しいやん。
普通だと、刈り払い機で草を切ると、刈り取った長い草が、周りに散らかっているもんだぜ。
それが、ない。
草は細かくみじん切りのミンチにされて、チップ状となって敷き詰めてあって、見事な仕上がり。

 ナイロンコードカッターでやると、草は細かく切れるという。
ナイロンコードを年間百メートルも擦り切るほど使う超ベテランのお爺さんが言っているわけだから、オレとしても性能を認めないわけにはいかず、再度使ってみることにすっか!。
お爺さんが使っていたのは「先端をポンと叩くと糸が出てくるタイプ」だ。

写真
お爺さんから教えてもらったタイプのナイロンコードカッター
2002年9月26日撮影

 が、 どこのホームセンターに行っても、同じ製品が見つからない。
仕方ないので別のものを買うことにしよう。
赤いナイロンコードが二十センチくらいで、端に止め金具がついてて、すり減ったら交換するタイプの別製品を買ってみた。

 顔を覆う金網のプロテクターも買った。
小さな破片が目に飛び込むと大変なので、プロテクターは千円以上で高価だったが購入した。
これで準備良し。

写真
フェイスガードというかプロテクター
2002年10月15日撮影

快刀ズババット
 はやる気持ちを抑えながら、エンジンを起動させた。
ズパパバッと、切れ味はかなり独特な感じだ。
草の破片の飛び散りがすごく、時々、顔面プロテクターの下の首の部分にあたって痛い。
ズボンの膝下は、濃い緑色に染まってしまう。

 コンクリートのへりも刈りやすいという効果は確かにあり、さらに、雑草をミンチに細かくするというオマケの効果もあって便利だ。
だが、赤いナイロン糸はすぐにすり減っていき、アスファルト沿いの雑草を刈るときは、路面にコードを当てながら刈るので、とくに消耗が激しい。

 固い草は刈れない。
柔らかい草が専用で、固い草はチップソーなどの一般的な金属刃を使うことになる。

 ナイロンコードの切れ味はやや悪く感じたが、エンジンを高速回転させると、安定してよく切れることがわかった。
それにしても、赤いナイロンコードがすぐにすり減る。
いちいちコードを交換するのがめんどくさくて、二十本入りだったか、予備の赤いナイロンコードの袋入りを使い切ったところで、シビレも切れた。

 この赤いナイロンコードの製品はやめて、別のやつを買うことにしよう。
そこで、五メートルくらいのナイロン糸が巻けて、手作業で順次引き出して使うタイプのものを新たに買った。
値段は安いし軽いし、短くなったナイロン糸をいちいち捨てることもなく、繰り出しながら使えるので、良さそうだ。

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みぞに泥がたまって乾燥して固まった状態
2002年9月26日撮影

 で、使いつづけてみると、刈り払い機の先端部分というのは地面と接触することが多くて、泥や草のカスをよく跳ね飛ばす。
これが、糸巻きタイプのミゾにたまって、固まってきたので、手作業でコードを引き出すことが難しくなった。
我慢して使っていたが、う〜、めんどい、もうこりゃだめだ!。
もっと別のにしよう。

オートリールタイプ
 オートリールといって糸を自動で繰り出すタイプのものがホームセンターで販売していた。
オートリールは「すり減った分だけ自動で繰り出す」という触れ込みだ。
三千円ぐらいして値段が高いが、オレはあきらめて、これを買うことにした。

 果樹の畑で刈る。
おお、なかなか調子いいぞ。
内蔵ナイロン糸が全部なくなるまで使って、新しくナイロン糸をセットするため分解してみた。
そしたら、内部構造はかなり複雑だ。
泥や草カスが多い場所で使うには、カスが詰まって、複雑な構造のものは動作不良を起こしやすいので、なんだか心配だ。

 今度は田んぼに行き、アゼの草を刈る。
なんだか、糸が出過ぎるなあ。
内部のバネが伸びたらしい。
出過ぎると、草が刈りづらくなる、というか、コードが適度な長さなら「ギッーン」と高速回転するが、長過ぎると「ビヨーン」というカンジで回転して、ルーズで草が刈りにくい。

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コードの長さは、指でつまんだ位置までで充分なんだが…
2002年9月26日撮影

 コードが長く出過ぎるので、これを短くセットし直しても、オートリールであるから勝手に「ビヨーン」と長く出てしまう。
ビヨーン、ビヨヨ〜ン、という具合で、我慢して使い続けていたが、…とっても刈りにくい。
なんだか、もうダメだ、これはあ!。
三千円ムダガネだ!。
こんなことならお爺さんが使っていたものと全く同じものを最初から買っとけばよかった。

ナイロンコードカッターの決定版まだかい
 お爺さん、どこに売っているのですか?どこのホームセンターにも売っていないんです、そのタイプがサイコーなんですよ、え、農協で売ってる、注文で?、でもオレ農協からモノ買ったこと一度もないんですけど、あ、お爺さんから注文していただける?、ありがとうございます、ぜひお願いします。

 というわけで、さすが道具ひとつとってみても農協は農作業のプロ、という感を持った次第で、オレは「先端をポンと叩くと糸が出てくるタイプ」を購入した次第だ。
ちなみに一個四千四百円なり。

写真
決定版だと思ったが…。2002年9月26日撮影

 で、ようやく安心と思ったところ、刈り払い機の先端の取り付けについて、ネジの大きさが合わなくて、取り付けできないでやんの。
一難去って又一難。
またまた仕方ないので、貧弱パワーで廃棄しようと思っていた古い刈り払い機をまた引っぱり出してきて、これに取り付けた。

 ナイロンコードカッターは、高速で回転させた方が使い良いので、小型軽量エンジンよりも、やや本格的サイズのエンジンが付いた刈り払い機を使った方がいいのだが、もう、困っちゃうなあ〜。
とはいえ、なんだかんだ言いつつも、結局、オレはナイロンコードカッターを大変よく使うようになった。

 短い雑草がびっちりと生えているところ、田んぼのアゼや、柵で柱が並んでいるところ、ビニルハウスのパイプの根元、側溝のフタのわずかな隙間から伸び出した草だの、刈り払い機の金属刃では刈り辛いが手で雑草抜きするには広すぎるところで、ナイロンコードカッターが大活躍できるんだ。

 なんつーか、ラクなんだよな、ナイロンコードカッターでやると。
笹だの篠竹だのススキやセイダカアワダチソウなど、そういう屈強な雑草は苦手だが、一度目はチップソーの金属刃で刈って、二度目からの柔らかい再生した草では、ナイロンコードカッターがかなり使える。

 家庭の「庭」でやると、地面の小石をハジキ飛ばしてガラスにビシビシ当たって割れたり、クルマの表面にキズやゴミが付きやすく、車体に付いた草のカスはなかなか落ちないので、庭では使いにくい。
なにぶん、ナイロンコードカッターは現在(二〇〇二年)でも、まだ発展途上中、という製品なので、今後はもっと完成度が高まった製品が出てくると思う。

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