スモモ・プルーン 極楽と地獄
 姉が小学校卒業記念樹にスモモの苗木を選んだので「え〜、スモモって酸っぱいモモお?、嫌だあ〜」と当時小学生のオレはすぐに連想したよ。
オレは、すっぱいのは好きじゃなかったから興味なかった。
そのスモモ苗木は植えられたが、樹が大きく育っても果実はほとんど成らなかったし。

 月日は思いきり経って十年ぐらい後のこと。
果樹の本によると、現在のスモモというものは甘くなっているというじゃないか!。
完熟させるとものすごくウマイとかかんとかで、家庭栽培ならではの極上の味覚という。

 甘露とはこのことか、だの、美味なる水菓子だの、夢中でがぶりつくだの、こんなうまい果物は今まで食べたことがないだの最高の誉め言葉で褒めちぎって賛辞してあって、もう、めちゃめちゃウラヤマシイじゃねえかようっ!。
スモモは色とりどりで、いろんなバリエーションがあるし、熟期をずらせば次々に収穫できるし、病虫害に強いし、栽培はとても簡単だという。

 こんなおいしいスモモが店頭に出回らないのは、完熟させると日持ちがしないからだという。
もはや酸っぱいモモではない、「プラム」と呼ぶようになったという。
家庭栽培なら、この究極のおいしさが味わえるわけで、すげえぞこれはよ!。

 うまそーな描写を読んでいるうち夢中になって、オレの果樹栽培では大いに力を入れることにした。
苗木の購入本数も、割り当てた面積も、費やした努力もスモモは「大」、というかオレの果樹栽培では「最大」だったといっていい。
その結果はいかに?。

 それがな、ギャー、ムカツク!、大失敗でなっ!。
ぐんぐん育って、花はた〜くさん咲くけど、実がまったく成らずの惨状だ。
受粉樹を混植してもダメ。
人工受粉してもダメ。
木が大きく育ってもダメ。
剪定に気をつけてダメ。
知らねえよ、もう。

スモモの隠された欠点
 ようやく少しばかり成って、ほんのわずかな数だけ収穫はあったが、ガリガリで酸っぱくてお粗末な味のありさま。
熟度が足りないのかな?と思って、完熟を待っていると果実が腐りだした。
おまけに更なるトラブルが!。
せっかく少し成り始めた大きなスモモの樹が、二本とも急に枯れてしまったんだよちくしょう。
トン死で大ダメージだ。

 オレんとこの土地では、スモモ、プルーン、アンズなどは軒並みで結実不良だった。
プルーンは花の咲く数が少なかったが、これまた突然ポックリ枯死してしまったし。
オレの果樹栽培では、スモモ類は最大級の大失敗でさ、思い出すのもハラ立つので、今まで「果樹園日記」ではスモモは述べなかったくらいだ。

 園芸本には、スモモが成らないときは「受粉樹を混植するといい」と馬鹿の一つ覚えみたいに載っているが、そんなことはオレだって知ってらーな。
花粉の交配があっても成らない状態だったのさ。

 アンズの十倍ぐらい重点的にやったが、結局十倍ぐらいの大失敗となってしまったというわけだ。
※アンズ栽培については「アンズるより買うが安し」に書いておいた。

 全く栽培ダメというわけでもないんだが、ちょっとどころかだいぶ、オレは…もういいや。
結果的には、スーパーマーケットの市販のスモモの方がずっと良かった。
といっても店頭の多くのスモモは、依然として「酸っぱいモモ」が数多く売られているけどな。

 それにしても何が原因か推測してみると、オレんとこの土地柄は黒土で深さ一メートルくらいも栄養充分な土なので、生育過剰を示すのだろう。
ユスラウメもスモモに近い種類だが、同じ現象を示しているのでな。
※ユスラウメ栽培についてはユスラウメ/ゆすらうめに書いておいた。

 スモモに近い種類で、茨城県で豊作に実るのは、ウメぐらいだろうか。
野菜栽培には向いているが、果樹のスモモ類には逆に不向きなんだろう。
げんに、うちの周りでもスモモがよく成る木はろくに見当たらないから、こりゃあ土質のせいだろう、たぶん。

スモモ狩りガリ
 が、それがだ、わりと近くの親戚の家でスモモが成っているでやんの。
うらやましい。
一九九九年の七月のことだ。
おばの家に行って、ついていくと、やや斜面の土地に、スモモやクリ、柿などがたくさん植えてあった。
高さ三〜四メートルの木に、スモモがポツポツと付いていた。

 鈴成りというわけではないが、木がやや大きいので、成っている数そのものはけっこう数がついていた。
百個以上というわけではないが、数十個はあるだろうか。
手で届く範囲のところは、おばと一緒に収穫した。
カラスが突いた跡があるスモモが少々あったが、かなりの数のスモモを収穫できた。

 収穫したスモモをさっそくかじると、なんか独特の香りがある。
いい香りだ。
がぶりとやると、すっぱいが、それほどすっぱいわけでもなく、甘さもそれなりにあって、スモモらしい味であった。
おばからは、たくさんのスモモをもらって帰ったオレであった。

 翌年二〇〇〇年七月九日にも、再び収穫に行って、たくさんもらってきた。
このスモモは、たぶん大石早生(おおいしわせ)というスモモだろうな。
成りはポツポツ気味。

 鈴成りというわけではなかったので、結実率がやや不向きだと思うが、品質もやや酸っぱめで、完熟させようとしても腐り始めたものが多い。
カラスの被害は大。
山林がすぐそばのこともあり、熟し始めると急に被害に遭うらしい。

赤くてリンゴのようなスモモ
 オレんちの庭や畑では、スモモの栽培が特に不向きのようで、今までうまくいったためしがない。
それが二〇〇一年に限っては、なぜか成った。
このスモモの木は姉が卒業記念に購入したもので、えーと何年前だ?、およそ二十年もたっているだろうか。

 毎年花はたくさん咲くわりには結実皆無の状態で、受粉樹を植えようが人工受粉をしようが全然効果なし。
もうあきらめて放任してあった。
それがいつのまにか、スモモが大量収穫されていて、これは親が収穫していた。
時期は二〇〇一年八月上旬のこと。

 この大収穫は「初めて」というのが特徴で、大量収穫といっても二十〜三十個だけどな。
一〜二個だけの収穫はごくまれにあったんだが、今回はめでたく一杯だ。
成ったスモモの果実は、外観の皮は赤くて、拭くとテカテカと光沢まである。

 表面は固くて、テーブルの上に置くと、まるで小型のリンゴみたいだ。
かじると中身までこれが結構固くて、ガリガリとリンゴかナシをかじっているみたいで、味はとてもすっぱい。
果肉の中身は黄色。
外皮は赤で、果肉は黄色というと、いくつかの特徴を検討すると、これは「サンタローザ」というスモモだな、とオレは判断した。

 それにしても、今年はなぜ急に数多く収穫できるようになったのか、よくわからない。
数年後には道路拡張予定地ということで、このスモモは伐採予定が決まっているから、木生最後の頑張りだろうか。
そのためというわけでもなかろうが、そんな推測もちょっと信じたくなってしまう。

青いプルーン
 今オレが住んでいるアパートの脇に、なんと西洋スモモというかプルーンが成っているんだ。
んなあバカなっ!。
オレはさんざん失敗したのに、なんであっけなく成っているんだあ?。
世の中ではプルーンは珍しくないかもしれないが、実際に目の前に、青い果実が木にたくさん成っているのは驚きだ。

 緑色じゃないよ。
青い果実というのが、断然すごさを感じる。
プルーンの本来の果皮の色は、黒っぽくて、表面に白い粉があるため青に見える。
ブルーベリーと同じだ。
このプルーンは、よその家の庭に成っているから、見るだけで食べることもできないが、うらやましい。

写真
毛虫が繁殖して、葉っぱが少なめ(2001年8月24日撮影)
見る見るうちに丸坊主になってきたので8月30日ごろ全収穫されていた

 熟すのは八〜九月くらいだが、果実がおいしそうに色づくのは一ヵ月ぐらいも早くからなので、つい早採りしやすいという話を読んだことがある。
そういえばたしかプルーンの国内生産は、長野県が多いと思ったなあ。
が、冷涼地だけに限らなくても一応成るようだ。
でも、トン死したプルーンの木はオレんちだけでなくて近所でも見たことがあるし、やや毛虫が付きやすいようだし、暖地では当たり外れのムラっ気がある果樹のようだ。

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