ザクロざくざく成らんかい
 時は、十年以上前のこと。
果樹栽培に、これから取り組み始めようとしていたころだ。
夢一杯の楽しい検討。
ワクワクしながら考えた。

 初夏はスモモ、秋はカキをメインにしよう。
補足果樹として、コンビで小型の果樹も組ませることにしよう。
六月はグミで、七月はグーズベリーで、八月にブルーベリーで、九月はナツメにして、十月は何にしようかな?。

 渋い秋グミか、サルナシというキウイの親戚も検討したが、情報や苗木の入手の仕方がよくわからなかった。
そもそも十月になると、ベリーってあまりないんだ。
う〜ん、ここはとりあえずザクロにしよう。

写真
近所で見つけたザクロ 2001年9月30日撮影

 ザクロはベリーというには大きすぎるが、ザクロの木は三メートル四方くらいでさほど大きな木には伸びないということだし、良さそうだ。
よーし、月々の組み合わせは決まった!。
これで毎月のように果物が食べられるぞ。

ざくろよ、育てーい
 さて、苗木だ。
ザクロに関しては、果樹苗の売り場に行って、わりとあっけなく購入できた。
で、植えた。
育ちはのろかったが、もともとそんなに大きく育たない樹木だそうだから、妥当な範囲内だろうか。
雑草もボサボサ伸びた。

 しばらくして一〜二年の年月が過ぎてから、アッ!、なにやら大きな異常が!。
雑草を掻き分けて根元を見ると、ザクロの根元に木屑がびっしり取り巻いていた。
カミキリムシというよりも、コウモリガと呼ばれる幼虫の被害で、幹の中を幼虫が食い荒らしているところだ。
根元の周りを、ぐるっと一周して皮をかじりとってしまうので、養分が木の上部に伝わらず大きな被害となる。

 なんでこの虫は、一周してかじってしまうんだろ?。
木へのダメージ大きいじゃねえか、食うだけなら、こんな食べ方しなくたっていいだろうに。
そういやキウイの根元はこの虫の被害にさんざん遭ったっけ。

 まったくもう、ザクロの木は、苗木の時に根元から二股に分かれていたので、深く植えて苗木が二本に殖やせるようにしておいたから、コウモリガ?の被害にあった幹の方は切断して、一本の幹だけにして、育てることにした。

 ざくろよ、育てーい。
一年で五十センチくらい伸びたこともあり、まあまあわりと順調、葉っぱは緑と赤っぽい色で、なかなかオシャレな木だ。
庭木として使われるだけはある。

 そのころ、ザクロ版アメリカ黒船来襲!。
ハリウッド映画だけでなく、アメリカで作られるものというのは世界に通用するというかグローバル戦略というか、アメリカ産のザクロがカタログで売られ始めていた。
こいつのキャッチフレーズは「大きくて甘いざくろ」だという。

 日本産のザクロというのは酸っぱいことが昔からの味で、昔話では鬼子母神だったか、人肉の代わりに味がよく似たザクロを食べたとかかんとか、そもそも人肉が酸っぱいかどうか知らないが、そんなローカル日本の話なんか吹き飛ばすぜワンダフル、アメリカ産はスイートだぜ、ビッグだぜ、果実が割れないから流通にも日保ちがいいぜ、商品価値だってあるぜ、カネがもうかるぜ、とアメリカ資本主義的なザクロが、日本の果樹園芸カタログのザクロ品種という小さな所まで席巻しているのだった。

※ザクロについての参考URL
(2004年2月13日時点のURL)

アメリカンなザクロ
 割れないザクロ?。
ザクロは熟すと、果実が割れ出すという特徴がある。
割れると赤いツブツブが見えてきて、「ザクロのようにアタマをかち割る」とか、文章で見かけたことがある。
表現が古くさくなったのか、今ではあまり言わないけどさ。

 ザクロの裂果は特徴だと思っていたが、園芸カタログで見たアメリカザクロは果実が割れないという。
メイド・イン・USAザクロを園芸カタログで見てたら、だんだん欲しくなってきた。
一方、オレが植えた日本製ザクロは、残った幹にも新たにコウモリガの第二波の被害を受けてしまって、またまた大ダメージを受けていた。

 再び育て直すのが嫌になったこともあって見切りをつけてしまい、アメリカザクロの苗木を買って植え直したと思う。
今度は畑の隅っこでなく、日当たりのいい場所だ。
ニョキニョキと元気よく育った。
今度はコウモリガの被害はあまり受けることはなく育っていき、高さ二メートルに達した。

 ザクロって、木にトゲがあるんだぜ。
あるからって、実際によくケガするわけではないが、ちょっと意外だったし、モズのはやにえが突き刺してあったこともある。
もういいかげんに花が咲きそうだと思っていた年のころ、急に花が咲き出した。
赤いキレイな花だ。

 ザクロって、鑑賞用の園芸ザクロもあるくらいで、見事で大きな花だ。
最初の開花の年は、実が成らなかった。
が、仕方ないと思ったので、翌年以降に期待することにした。
そして、翌年の五月ごろだろうか、花が咲き出した。

 ぞくぞくと咲き出した。
咲き終わると花は完全に落ちてしまって、あいにくなことに、果実のもとになる部分が膨らんでこない。
花は咲けども、結実不良のわけだ。
なんでえ?。

 なお、ザクロは一本だけでも実が成るから、受粉のことはあまり心配しなくていい。
あと、ザクロの特徴なんだろうか、六、七月になってもダラダラと花が次々に咲いて、咲き終わると落ちていった。
これらも結実皆無だった。

芸術家気質か、ザクロ
 翌年もどうだったかな?。
オレはよく覚えてないが、いや、アメリカザクロに実が成ったことはあるんだ。
小さくて発育不良のやつ。
全然、ビッグなザクロ果実はできなかった。

 木ばかりが発育しすぎて、果実は結実不良で、発育不良だった。
ただアメリカザクロのせいではないようで、オレが栽培した畑では、他のスモモ、アンズ、ナツメまで、花は咲けども実が成らず、を大連発していたから、土地柄のせいらしい。

 というわけで、ああ、オレは自らの手で伐採してしまって、いまはアメリカザクロの木はない。
今になって思えば、近所でザクロやナツメが樹にたくさん成っていることがあるので、土地や気候のせいだけではないと思うけどな。
オレが植えたザクロは、もっと長い期間植えていれば、いずれは落ち着いて、果実の成りがもっとマシになったと思う。

豊作ザクロ発見
 二〇〇一年、なぜか近所ではザクロの当たり年のようで、敷地に植えられた木に、赤くてまるい果実がたくさん成っていた。
あの赤い果実はリンゴか?。

写真
茨城県 水戸市で
2001年10月6日撮影

 接近して見ると、これはザクロだあ。
オレは過去にもザクロの木をチェックしていたが、ザクロの果実はあまり成らないものだと判断を下していた。
近所のザクロもそんなに沢山成るものではなかった。

 それがだ、今年はたくさんなっているから驚き。
その家に入って頼めば果実はもらえると思うが、ちょっと恥ずかしいなあ。
スーパーマーケットのフルーツコーナーでザクロが売られていることがあるので、これは何度も買ったことがある。
お味は?。

 甘いというより、ニガイ、だな。
赤いツブツブ果肉は、甘味もあるように感じたのだが、外皮というか、食べられない果肉の部分、ミカンでいえば外側の皮みたいなところの、剥くところがとても苦い。

デザートのケーキに登場
 ジュースなんてとても無理そう。
グレナディンジュースとか、これはザクロジュースなんだが、どうやって作ったのやら。
食べるなら、赤い粒々だけを選び出して、外皮を含めないようにすれば、なかなかイケルらしい。

 ザクロをオシャレに、高級果実として活用するのは難しいとオレは思っていたが、そんなある日、レストランであっさり実現しているのを見つけた。

写真
茨城県 大洗町のレストラン「ヌーボー」のレアチーズケーキ
下方の赤いのが、ザクロの粒
2001年11月11日撮影

 赤くて、トウモロコシみたいな粒々がザクロの実をほぐしたものだ。
かむとプチプチして、甘味と酸味があり、特徴ある味覚で、おいしかった。
なんといっても真っ赤な色が目立つし、デザートのケーキによく似合うと思う。

写真
上記レストランの窓から見た海

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