プランターで栽培開始
 茨城の実家では、四季成りイチゴが雑草に埋もれて貧弱ながらも生きていた。
この時点では、四季成りイチゴは五株以内だったと思う。
これを抜っこぬいて、群馬県の寮に運んだ。
イチゴというのは、本来は多年草であって、年々その場に生えたままなんだ。

 ともあれ、オレとしては、一年以上前のイチゴ苗を再利用できたので、購入する手間が省けて助かった。
なおイチゴ苗というのは、普通は一年だけの使用だけどな。
イチゴはランナーという芽を伸ばして増えるので、世話さえすればどんどん増えていくんだ。
だから株の数が少なくても、増やすつもりだったので気にしなかった。

 群馬県の寮まで運んで、そしてオレは植木鉢を購入するべくホームセンターへ行った。
そこでは、プランターが容量のわりに植木鉢よりも安かったので、オレはプランターを買った。
それにイチゴの苗というのは、たくさんあった方が果実もたくさん収穫できるだろうから、プランターの方が都合が良さそうだ。
そして、茨城から運んできたイチゴ苗をプランターに植えて、寮の庭に置いた。
こうしてオレは、四季成りイチゴの世話をしはじめた、というわけだ。

四季成りイチゴ栽培と水やり
 四季成りイチゴ「夏芳」は本来なら五月ごろにも収穫があるんだが、植えたばかりだったから、この月は収穫なし。
ま、しょうがねえかな。
だが、「夏芳」は早くも翌月ごろからつぼみが出来て、白い花が咲きはじめた。

 普通のイチゴだったら、この時期は葉っぱだけの状態なんだぜ。
まさしく四季成りイチゴの威力発揮で、オレとしても良い気分だ。
すごいだろ。
そして実が育ちはじめた。

 でも、苗の数そのものがまだ少なかったので、六〜七月ごろに収穫はあったはずだが、とくに覚えていない。
六月ごろは雨がよく降ったから、水やりはしなくてすんだ。
が、夏は暑く、一日ぐらいで乾いてしまう。
毎日の水やりはなにしろ大変だ。

 そこでプランターは、屋根から雨水が落ちるところに置いた。
少量の雨でも、水分が充分補給できるというわけだ。
雨は毎日降るわけではないので、晴天の日はバケツに水をくんで、プランターにたっぷりかけた。

 なお、水やりのさいに、花に水をぶっかけると、または雨が降ったりすると、花は受精不良をおこすようだ。
奇形果になってしまって、形は歪んで、味も悪い。
屋根から雨水が直接落ちるようにしたことで、水やりの手間はだいぶ省けたものの、奇形果はかなり多くできてしまったけどな。

写真
群馬県 赤城荘にて 1990年7月30日撮影

 夏休みは自転車旅行のため約二週間外出したが、その間は寮のおばさんに水やりを頼んだと思う。
おかげで枯れることはなく、助かった。

四季成りイチゴ夏芳の収穫
 で、九月以降だ。
普通ならイチゴなんぞ収穫できるわけがない季節だ。
これからが四季成りイチゴの威力発揮だ!。
秋にも成るというのがすごい。
このころにはイチゴの株も増えて、プランターは五箱、株は十五本以上に増えていた。
これだけあれば、多くの収穫が期待できそうだ。

 果たして、十月ごろ。
四季成りイチゴは続々と成り始めた。
じつにめでたい。
まさしく続々であって、うれしい忙しさだ。
もう秋だというのに、赤いイチゴがぶらぶらぶら下がって、なかなか圧巻だ。

 こうでなくちゃーあな。
次から次へと赤く熟してきて、豊作の収穫だ!。
気温が寒くなって霜がおりるまで、収穫を連続的に行うことができた。
この四季成りイチゴ「夏芳」は病虫害もなかったし、発育は順調、結実は豊産で、すごかった。

イラスト

 しかしだ!、残念なことに、この四季成りイチゴ「夏芳」には弱点があって、それは「まあまあの味」だということだった。
お店のイチゴの方がうまい有様で、「夏芳」は完熟しないうちから食うと、つまり未熟な状態だとマズかった。
完熟させれば、なかなかウマイんだが、それまで待っているとアリに中味を食われてしまうでやんの。
これには困った。
当時はどうしていいかわからず、結局、やや完熟手前で食うことも多かったな。

漫画「四季成りイチゴ栽培」一九九〇年十月に執筆
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 今にして思えば、イチゴの果実に小袋でもかけりゃ良かったんじゃねえかと思っているところだ。
小袋?。
つまり袋かけのこと。
これでアリを防いで、イチゴを完熟させようというアイデアだ。
果樹では「袋かけ」はよく行われる方法だが、イチゴには通常やらない。
そりゃ、小さすぎるからなー。
でも農薬を使わずにやれる方法だし、そもそもプランター栽培で数も少ないから、実現可能だったんじゃないかと思っているところだ。

四季成りイチゴ試行錯誤
 プランターに植えていた四季成りイチゴ夏芳は、冬を越して、一九九二年五月の収穫も豊作ザックザク。
簡単にたくさん収穫できて、オレの気分もよろしい。

 学生寮があった群馬県伊勢崎市だが、夏が超猛烈に暑いのなんのって、気象情報では「気温は三十八度」とか連日のように報道してやんの。
朝にピンピンに立っていたイチゴ苗が、夕方にはぐったりとヘニャヘニャになっているんだもんな。
急いで水をバケツで大補給すると、たちまち元気回復して、イチゴ苗はおっ立つ。

 が、毎日のように水やりがこんなに必要ではあまりにも大変すぎるし、これじゃ〜、いつまでも維持するのは無理だ、と思えてきた。
しばらく留守にする予定もあったので、残念ながら夏越しすることを断念して水やりをサボったら、たちまちみんなひからびて枯れてしまった。
もったいないというか、無念だ。

 卒業後は実家に戻ったが、四季成りイチゴが良い印象として残ったので、再び栽培することにした。
夏芳は、味がイマイチすぎて、つまりあんまりうまくなかったから、園芸カタログで新しい品種をいろいろ買ってみた。
今まで買った四季成りイチゴは、全部で十品種ぐらいもあるだろうか。
が、予想外なことに、ほとんどが失敗続出で、困った。
一番多い失敗はろくに成長しないことで、発育不良の虚弱体質なイチゴが大変多かった。

  果実も小さかったり、味もイマイチ君が多すぎて、育てやすさや品質を判断すると、夏芳を上回る四季成りイチゴは見当たらなかった、というのが、実感だ。
農業全体から見ても、四季成りイチゴは今まで多くの品種があったが、商業流通として経済的に成り立ったことはない、と言っても過言ではないのが実情だ。
近い将来は、成功の見込みはあると思うんだけどなー。

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