菜っ葉の小松菜
 有機栽培の専門書を読んで、野菜の中では最も簡単?だという「コマツナ」を育てることにした。
有機栽培の達人の本によると、タネ蒔きは、秋の彼岸(ひがん)前はダメだという。
まだ暑いと、虫がつきやすいからだそうだ。
涼しくなってからの方が、被害が少なくなるという。

 ここでいったん「小松菜」とは何か?、について述べてみよう。
葉っぱを食べる野菜としては、ほうれん草が有名だが、キャベツやネギも葉っぱだが、葉物らしい野菜としては、ほうれん草と並んで代表的なのが「小松菜」だ。
外観はほうれん草と大変よく似てると思う、というかオレは以前、見分けがつかなかったけどな。

 元々は東京?の小松という地名のところで作られたらしい。
小松だから小松菜で、野沢だったら野沢菜、油をとるならアブラ菜、だ。
これらはアブラナ科の仲間で似たような菜っ葉類がたくさんあるが、コマツナは大根系ではなく、カブに近い仲間のようだ。
ただし、根っこは食べず、もっぱら葉っぱを食べるというわけだ。

 で、葉っぱを食べるのは人間だけでなく、害虫も食べるのが栽培上の問題だ。
農薬で害虫を防ぐ手もあるが、秋の彼岸すぎになると涼しくなって害虫が減って、農薬を使わなくても被害が減るという利点がある。
だから、秋は彼岸の後にタネをまきましょう、と有機栽培の本には書いてあったわけだ。

 よし、わかった。
夏野菜がまだ残っていたが、シャベルでこれらの野菜は一気に土に埋めて、肥料がわりにした。
土の表面を平らにならして、コマツナのタネを、確か二〇〇〇年九月二十日に蒔いた。
もう少し遅くなってから十月でもよかったが、待ちきれなくなって蒔いてしまった。

こまつたな小松菜
 タネを蒔いてから少したつと、小さな芽がちょびちょび生えてきた。
畑を耕して雑草がほとんど無かったおかげもあって、ちっちゃなコマツナは順調に育ちだした。
蒔いて一ヵ月ぐらいは貧弱だったが、一ヵ月半ぐらいたった十一月最初のころから収穫できるサイズとなってきた。
根元から葉先まで二十センチくらい。

 収穫まで月日がかからなくて、早いもんだ。
根元から注意深く切り取って、みそ汁の具にするとウマイ。
だがピンチ到来!で、アブラムシが付いて、だんだん殖えてきた。
水で丁寧に洗い流せばほとんどいなくなるが、葉っぱを茹でると数匹が浮き上がってきた。

 茹でて浮き上がったのをすくいとっても、葉っぱに付着しているのがいるかもしれないし、それを目をつぶって食べてしまうか、または、カレーに混ぜて目に見えなくして食ってしまうか、もしくは、虫が死滅するような薬をかけてその葉っぱを人間が食うかどうかは、まあ、方法はいろいろあるが、タネを蒔いた時期が秋の彼岸過ぎでなくて、ちょっと早かったのが悪影響したらしい。


写真写真
畑のコマツ菜 2000年12月16日撮影

 オレのコマツナについたアブラムシは十一月がひどくて、これ以上殖えたらもうダメだ〜と思っていたら、十二月になって冷え込んできて大分少なくなった。
なんとかセーフだ。
が、まだいる。
一月になると、ほとんどいなくなり、二月でいなくなった。
で、根元まで切らずに、葉っぱだけ切り落とすと根元からまた葉っぱが伸びてくるので、再利用しまくった。

 だが二月になると、寒さで葉っぱがヨレヨレで、コマツナは少々変な味がした。
三月になると暖かくなって、新しい葉っぱが伸びだしたので、それを収穫して食った。
株はもう古くなって味はうまくなかったが、意外なくらいに長々と収穫が続いて、こりゃあ、なかなかええなあ。

トウも収穫できる
 細々と長々と収穫が続いて、春の彼岸になった。
暖かくなるとトウが立ってくる。
これも一応、調理することができる。
菜の花のツボミはうまくて、コマツナのつぼみもほとんどそっくりだ。

写真
これは収穫しなかったが、河川敷の菜の花
2001年5月5日撮影

 が、どうもオレの調理が下手くそなのだろうか、年明け後の葉っぱは単に茹でただけだったし、ツボミも茹でただけでは、どうも味が…栽培しているオレ本人が言うのも悔しいことだが、ややマズかったよーな気がする。
が、なにしろ冬の野菜は他にほとんどなかったし、味のことよりも手軽に収穫できたので、総合的にはウマくいった、と思う。

春のうららの七草の小川はどうした?
 菜の花は、アブラナともいうわけで、本来は油をとるために栽培されるのだろうけど、葉っぱやつぼみもそれなりに調理できる。
オレ自身が栽培しているわけではないが、河川敷に生えているのを利用したいと思った。

 以前に、カラシナだという植物を教えられて、先端の芽とつぼみを食べると辛くてうまかった。
あれは良かった。
もっとも、アブラナとカラシナの見分けはオレにはできないがな。

 近所の那珂川に行った。
カヌーで川下りをしながら、川岸の菜の花を摘もう、という計画だ。
漕ぎ出すと、もう足が届かない深みで、ちょっと恐ろしいような気がしないでもない。
川の上を進むと、ふだんとは違った異世界の景色で、快適快適!。

 は〜るのうらら〜の♪。
あ、これは「隅田川」の曲だ。
ここは「那珂川」だ。
は〜るのおがわはさらさら行くよ〜♪。
小川というには、那珂川は大きすぎる川だがな。

 と、前方がザワザワしている瀬が見えた。
白波がたっていて、ざわめいている。
みるみるうちに突入していくはめになり、小さな白波のはずなのに、大きなうねりがご〜ん、ご〜んと揺れて、フネはぐらぐら揺れた。
転覆したら面倒なことになるっ!、全神経と腕力を集中させて、オレは突き進んだ。

 通り抜けると、解放感がとてもいい。
あっそうだ、アブラナアブラナはっと?。
トウがたった黄色いアブラナが見えて、川岸に点在していた。
フネに乗ったまま近づいて、手を伸ばして摘み取ろうと考えていたが、大きな川なので水位変動が大きく、生えている場所は水面よりも高くて手が届かない。

 むむう、無理か。
上陸せんとな。
だがあまりにも快適なので、川の流れのようにゆるやかな気分になり、もっと時間に余裕がほしいなと思った。

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