タラの芽のテンプラうまい
 「たらのめ」は山菜の中では大変有名らしいが、オレが小学生のころは(一九八〇年代)、ぜ〜んぜん知らなかったな。
中学生の時、友達と釣りに行ったら、その帰り道で、友達が木の芽を摘み始めた。
友達が言うには「たらぼ」(以下「タラの芽」)と言って、これは食べられるんだそうだ。
ふ〜ん、そう?。
オレはよくわからなかったが、友達と一緒になって摘むことにした。

 友達が言うには「トゲがある木のやつを取るんだ」と言う。
言われてみれば、白っぽくて一本棒に伸びた、トゲトゲのヘンな木があって、それの先端の芽を取るらしい。
写真
(左)タラの芽   (中)タラの芽   (右)ウルシの芽  
この写真はオレが撮影したものではなく、
別のホームページから引用したものだ

ウルシとタラの見分け方
 「トゲがないのはウルシだから、絶対採っちゃダメだ。」
友達が言った。
ウルシ?。
ウルシの芽を食ったりしたら、腹の中からかぶれて大変なことになるという。

 ウルシとタラのそれぞれの芽を見ると、ウルシの方はなんだか赤っぽい色だ。
だが、発育や場所によってはあまり赤くないのもあった。
「芽を見てわからなかったら、下の枝のところを見てトゲがあったらいいんだ。全然ないのはウルシだ。」
友達の実地講議は続いた。

 言われてみると、タラの枝の部分には、トゲがたくさんあった。
一方、ウルシは、枝にトゲが全くなかった。
トゲがあるかないかで、タラとウルシを明白に見分けることができた。
よし、わかったぞ。

 ただし、タラの木でもトゲが少ない枝があって、まぎらわしかった。
が、少なくてもトゲは必ずあった。
とくに、木が大きくて、太くなったものは、幹にはトゲはあまりついていなかったので、わかりづらかった。
タラかウルシか見分けに自信がないときは、そういうものは採らないようにしておいた。

タラの芽のテンプラ美味しいね!
 摘んだタラの芽を持って、友達の家に一緒に戻ったら、友達の母親によって料理がさっそく始まった。
テンプラだ。
さっきまで木に付いていた芽だというのに、たちまち料理されてしまった。
で、出されたタラの芽テンプラに、ショウユを付けて食べてみた。
と、こりゃあ、見事なうまさだ!。

 タラの芽にもトゲがたくさんついていて触ると痛いのに、テンプラにすると不思議なことに、まったくトゲは感じない。
柔らかくなっている。
しかも、相当うまいじゃん。
当時中学生のオレは、肉類は大好きでも野菜はあまり好きじゃなかったが、それでもタラの芽テンプラは大変ウマイと思った。

 タラの芽に好印象を持ったオレは、一週間後だったか同じ場所に釣りに行ったとき、帰りにタラの芽を採っていくことにした。
しかし、同じ場所で同じタラの木だったため、芽があまり残っていなかった。
わずかなタラの芽を探し回って、脇芽も採ってしまった。
今になって思えば、頂芽は取っても、脇芽は残しておくべきだったんだけどなー。

 さて、帰り道にひょいとウルシの木を見たら、意外なことに、ウルシの芽も誰かに採られていた。
バカな奴がいるな、と思ったが、もしやと思ってオレの手元のタラの芽を見たら、なんだか赤っぽい芽が混じっていた。
よく見ると、トゲがないでやんの。
これは、ウルシの芽じゃねえか!。

間違えやすいウルシの芽
 あぶねえ、あぶねえ〜、食ったら大変なことになるところだった。
なにしろ、タラとウルシが混在している地域だから、こうなっちゃうんだよなー。

 さて、この数年後からタラの芽はブームになったらしく、急に有名になった。
オレは高校卒業後だったか、初めて採った場所にも行ってみた。
そしたら、芽を全て取られて、枯れたタラの木があった。
枯れたタラの木の光景は、さみしいもので、オレとしても収穫がなくて残念であった。

 芽を全て採ったことは、ま、オレもやったことがあるから、他人のことをとやかく言えた柄でもないが、収穫が乏しいと、ど〜も、小さいものまで取っちゃうんだよなー(弁解)。
さて、食べてはいけないウルシは、まさか採られていないハズだと(ワクワクしながら?)見に行ったら、ウルシの芽も無くなっていた!。
あ〜っ、タラの芽と勘違いして採られたようで、採った人はどうなったかオレは知らん。

 なお、山菜採りの図鑑をいろいろ見てきたが、タラの芽と一緒にウルシまで注意してあるのは、そのころは一部の本にあるだけだった。
危ねえことだな。

畑でタラの栽培
 天然のタラの芽を、今となっては、たくさん採ることは難しいことかもしれない。
なにしろ競争が激しくなってきたからな。
だが、畑にタラの木を植えている人がいるそうで、ちゃんと収穫できるらしい。

 考えてみると、オレの果樹栽培は六月になればいろいろ収穫できるが、五月は時期が早すぎて収穫はとても少ないからね。
タラの芽は五月の連休ごろに収穫できるから、オレの栽培では最も早い収穫になる。
それにタラの「木」だから、果樹と同じように栽培できそうだ。

 よし、だんだん乗り気になってきたぞ。
オレも植えようじゃないか!。
国道のわきの土手に、五十センチくらいの小さなタラの木が生えていたので、これを冬の間に掘り取ってくることにした。

タラの木を調達した
 自転車にシャベルを積んで、現場に到着し、素早く掘り起こしにかかった。
なにしろ、国道沿いだから車はよく通るし、夏になれば刈り取られてしまう土手とはいえ、オレは勝手に掘り取っているわけだから(一種の盗掘ですな)、大急ぎで掘った。

 根は、ゴボウ根というか、太い根が一本あるだけで、細かい根はほとんどなし、だった。
ちゃんと根付くかなあ〜。
根がなるべく多くなるように掘って、だが、急いでいるので、つかんで引っこ抜こうとしたらトゲトゲの枝なので、とっても痛い。

 それでもなんとか二本掘りとって、大急ぎで帰って、畑にただちに植えておいた。
その後の一年間、成長はあまり早くなかったが、まあまあ順調に育ったと思う。

園芸用のタラの木
 そのころ、パソコン通信で、園芸用のタラの木というものを知った。
普通の天然のタラの木は、一つの枝から芽が一〜三本ぐらい出るけど、園芸用のタラの木というのは芽がそれ以上に、ズラズラズラッとた〜くさん出るという。
しかも、春だけじゃなく、夏にかけて長い期間にわたって、次々に新芽が出るんだそうだ。
ひこばえもたくさん出るので本数もすぐに増えて、そのうえトゲがほとんどなくて扱いやすいという。

 ホントか?、だったらオレはこれを植えたい!。
このタラの品種、名前は「静岡みどり」という。
なんだか、女性の名前みたいだな。
静岡県の園芸試験場で、選抜育成されたタラの木らしい。
この「静岡みどり」は、サカタ園芸のカタログだと思うが載ったので、さっそく通信販売で注文しておいた。

 一九九八年の冬に届いた苗木は、長さ三十センチほどで、なんだか小さい苗木が送られてくることが多いなー。
今では近所の大型園芸店で「とげなしタラの木」という苗木が売られていることがあるので、これを買った方が手っ取り早いし、ずっと大きな苗木を買えるけどな。
オレが掘り取ってきた二本の天然タラの木は、育てることはやめて、タラの木は「静岡みどり」に全面的に切り替えることにした。

 が、天然タラの木を切ってしまうのは、ちょっともったいなく感じたので、新芽を収穫してから切ることにした。
一九九九年の春、収穫できたタラの芽はたったの二本だけ。
これだけではテンプラの用意をするのも大変なので、かまわずナマで食ってみた。
が、あいにくなことに、ナマでは全然うまくなかった。

タラの発育と収穫
 一九九八年春に買ったとげなしタラの苗「静岡みどり」は、三十センチほどの大きさだったが、一応なんとか順調に育って、一九九九年春(一年後)には高さ一メートルに育った。
さらに二〇〇〇年春(二年後)には、木の高さは三メートルに達した。
育ちは、なかなか早いな〜。

 伸びるといっても、ニョッキリ一本棒という樹型で、変な形だけどよ。
この枝というか、幹の先っぽに、新芽が伸びてきた。
よ〜し、そろそろ収穫だ!。

写真
収穫したタラの芽「静岡みどり」
2000年4月30日撮影

 それにしても、木が高すぎて、ノッポさんで、手が届かねえよ〜。
やっとのことで芽を収穫して、あとは脇芽を伸ばして、枝を分散させることにした。

テンプラうまかった
 収穫した肝心の「芽」なんだけど、これがデカい!。
ホントにタラの芽か?と疑いたくなるようなサイズで、トゲもないし、野生のタラの芽と比べれば、二倍の太さというか大きさがあって、体積にすれば八倍ぐらいあるんじゃないかと思うようなでっかさだ。

 収穫時期が少々遅かったので大きく育ってしまった事情もあるが、それを考慮しても、やっぱり大きいようだ。
たった二本のタラの木とはいえ、タラの芽を計五本以上収穫できたし、大きさのおかげもあって、なかなか結構な量となった。
実家に持ち帰って、母親に頼んでテンプラにしてもらった。

 コロモを付けたので、量はさらにふくれあがって、かなりの量になった。
オレは大皿で二皿ほど腹一杯食って、そりゃもう、うまかった。
他の人に食べてもらっても、皆の感想はウマイとのことで、好評だ。

 オレは腹一杯食って、満足したことはもちろんだが、その後の一週間以上にわたって、重度の腹もたれにかかった。
苦しい〜(体重五キロ減)。
原因は、タラの芽のせいではない可能性も高いが、そもそも「木の芽」は濃い成分が含まれているらしいから、来年からは一応注意しようと反省した。

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