ルーサー・バーバンクの「美女と三太郎」
 園芸書読んでたら、ルーサー・バーバンクの本についての引用文があった。
バーバンクか。
スモモの品種改良をやった人じゃん。

 バーバンクは、プラムのサンタローザを作り出した人で、あと、ビューティーもそうだ。
プルーンでも、バーバンクグランドプライズという品種もある。
引用文によれば、書籍は「実験園のバーバンク」という題名だそうで、その本、オレも読んでみたいな。

 サンタローザは三太郎という名前で呼ばれている地域もあって、ビューティーで思い付いたのが「美女と野獣」の英語版では「ビューティー アンド ビースト」と言ってたっけ。

 というわけで、「美女と三太郎」というタイトルは、ビューティー=美女、サンタローザ=三太郎として、ムリヤリパロディーした題名だ。

ディズニーアニメの「美女と野獣」の名場面

「実験園のバーバンク」古本で登場
 「バーバンクの実験園」という書名から推測すると、内容はバーバンクの伝記だろう。
果物栽培の話が、あれやこれやと満載されているに違いない。
ネットで検索したら幸いなことに見つかったので、注文しといた。

 注文を出したら、本が手元に届いた。
が…、すげええ〜!。
なんじゃこりゃあ、古すぎて、本は茶色に変色してるし、昭和二十五年発行の本だ。

写真
本の外観の傷みの割りには、中身はちゃんと読める
2011年4月11日撮影

 六十年前の本かよ!。
紙も古すぎて何だか臭う。
ともあれ、内容を読んでみる。
でも、旧字というか旧かなづかいというか、昔の漢字で読めん!、という箇所が時々ある。

 さて、内容はまさに、花粉交配による新品種育成、が満載テンコ盛り。
花粉の交配一回やってもそれが芽生えて育ってそれだけでも、果樹の場合だと三年や五年はかかるというのに、雑種一代を数千本育てて、その中から選抜して、また交配して育てて実が成ってから、また選抜して交配して、って、どんだけ年月がかかるんだよ!。

 果樹だぜ果樹!。
オレなんかは果樹栽培してて根気強いと誉められることはたまにあるけど、そのオレから見ても、バーバンクの品種改良の空前絶後っぷりには驚く。
つーか、マネできんわ!。

写真
ルーサー・バーバンクって、ハンサムだと思う
2011年4月11日撮影


 あ、そうそう。
本の外見に気をとられてばかりだったが、オレとしては本の内容で、スモモに関心があるんだった!。
まずは、スモモ、スモモと…。
サンタローザの育種のところが知りたいな。

 ありゃ、載ってないぞ。
変だな?。
日本スモモというか、プラムのことが載ってねえぞ!。
バーバンクにとっては、サンタローザは代表作のはずなんだがな。
こんなはずでは…。

 サンタローザという名前は、バーバンクが住んでいたサンタローザ市という地名から命名されているんだそうだ。
この「バーバンクの実験園」という古本に、スモモのサンタローザ育成の話が載ってないのは惜しい!。
バーバンクとスモモは、一番の面白いとこなんだけどなあ〜。
なんでオレがこんなにスモモのことにこだわるかというと、バーバンクのスモモの品種改良では、日本産のスモモが品種改良の育成親として使われているからだ。

スモモのサンタローザの育種
 悔しいから、オレが簡単にここで紹介したる!。
スモモのサンタローザの育種についてだ。
奇想天外なことに、バーバンクのプラムの品種改良には、幕末のサムライが登場してくる。

 アメリカのバーバンクという育種家の話題に、なんで、日本の幕末のサムライの話が出てくるのかって?。
果樹園芸の話に、サムライだの幕末だの、場違いな話題も甚だしいけど、じつは関係している。
時は、幕末。
薩摩藩は、留学生を西欧に送り出した。
その中に、長沢鼎(ながさわかなえ)という少年がいた。

 留学生たちは西欧で知識を身につけて帰国していくのだが、長沢はアメリカに残ったのだ。
そして、裸一貫、徒手空拳で、カリフォルニアの土地でブドウ園を開拓して作り上げ、ワイナリーとして成功させるのだ。
その長澤が住んだ土地は、サンタローザだ。

 バーバンクが住んで、育種していた土地だ。
しかも、生きた時代も同じ。
そして、長澤とバーバンクは付き合いがあった。

 これだけなら、知り合いだった、という話で終わるところだが、そうではない。
バーバンクは、果樹の育種にあたって、交配のための親品種を広く世界から収集した。
が、スモモの品種改良を行うにあたって、日本からもスモモを取り寄せている。

 そのころの日本のスモモというのは、まさしく酸っぱいモモで、あんまり重視されていなかったが、バーバンクは品種改良をすれば有用な果樹になることをすでに見抜いていた。
長沢鼎は、アメリカに永住することになるが、一時的に日本に里帰りしたときがあって、そのときに日本の、というか、薩摩のスモモを持って、バーバンクに渡している。

 そして、バーバンクはそれら日本のスモモや、欧米のプラムを交配して、見事なスモモ(プラム)を作り上げたのだ。
そして、自分の育種の土地であるサンタローザの名前をつけた。
そして、このプラム、サンタローザは、日本に逆輸入されて、今の日本におけるプラム栽培となったのだ。

 というわけさ。
この話は、園芸の資料というよりは、ブラックバスの移入の釣り情報に載っているというのも異色だ。
一般的な情報ではブラックバス移入は赤星鉄馬という人になるが、移入にあたっては、米国に在住していた親戚である長沢鼎に頼んで、日本へ送ってもらっているから。
というわけで、日本のブラックバスは、サンタローザ市で採捕されていたのが元になっていたりする。

 とまあ、バーバンクのスモモの話には、すごく興味深い話があるんだが、この「バーバンクの実験園」という本には、まるごと載っていない。
執筆者がスモモの育種を知らなかったはずはないので、ひょっとして、その話題は、別の書籍か文献にまとめられてしまったのだろうか?。

スモモの三太郎は長沢のおかげ
BlackBass 歴史について

果樹の品種改良の仕方
 スモモのサンタローザが載っていなかったのは残念だったが(代わりに?タネ無しプラムの育成の話は詳しく載っていた)、他に何か、オレの知識と繋がるような話題は…、どこかないかな?。

 ブルーベリーは?。
惜しい。
これまた一切の記述がない。

 バーバンクは、元々、コケモモが育っているような冷涼な土地出身だったので(その後、カリフォルニアに移住)、ブルーベリーのことも知っていたはずだが、この本にはブルーベリーのことは全然載ってない。

 バーバンクの死後、アメリカのブルーベリーは、まさに国家的事業として、大規模に品種改良が行われているんだがなあ〜。
ウエイマウスやジャージの開発年が、確か一九三〇年ごろだったか。

 その年代は、バーバンクの死後だ。
ブルーベリーの品種改良というのは、これがすさまじいもので、その事業の規模たるや、日本のコメの品種改良に準じるぐらいだ。

 これにバーバンクが関与してないのは惜しい。
カリフォルニアの土地が、(ハイブッシュ)ブルーベリーには、暖かすぎて栽培や育種ができなかったのだろうか?。



 では、何かオレが興味をひきそうな場面の内容は、この本に何かないかなーっと。
お花とか、牧草とか、エンドウなどの品種改良の話も多いが、ラズベリーの話がオレには面白かった。
「バーバンクの実験園」の内容については、なにしろ本文はかなりの文量だ。

 紹介するには、量が多すぎる。
そこで、モミジイチゴとラズベリーの交配品種のところを、ラズベリーの品種改良の話を題材として、本の内容の主題である「育種」について紹介してみようと思う。

 果樹の育種について、つまり、果樹の品種改良はどのようにやるのか?、ということをオレなりに簡単に紹介してみようと思う。
ラズベリーは、西欧ではかなりなじみのある果実だが、この品種改良に、これまた日本原産のラズベリーが一役かっている。

 バーバンクによるラズベリーの品種改良には、日本のラズベリーであるモミジイチゴを育種材料にした話が載っているのでね。
興味深いので、これについてだ!。

つづく
2011.4.07 記
2011.5.17 改訂

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