野外で木イチゴ探し
 「木イチゴ」は、子供の頃からよく食った食った。
この木イチゴというのは野生に生えているやつで、野生の果実といえば、オレの場合は木イチゴが代表じゃねえかな。
普通はアケビとか、ヤマブドウが、野生の果実として有名だけど、この二つは全然なじみがなかった。

 アケビはあまり見かけなかったし、たまにあっても木の高いところにあって手が届かなかったし、ヤマブドウは近所では見たこともなかったからな。
ねえものは食えねえよなー。
オレが育った環境では、野生の果実を採ったり野草を摘んだりすることは、元々あまりなかったんだ。
だけど木イチゴだけは例外で、よく採ったっけ。

 木イチゴは、植物図鑑によると黄色や黒い実もあるようだが、オレが子供のころ近所にあったのは赤い実だけだった。
名前は「ナワシロイチゴ」という種類らしい。
枝にトゲがあって、田んぼのわきの方によく生えていた。

 田んぼの近くにあるからナワシロという名前かと思ったが、昔の苗代の時期の六月のころに熟すからナワシロイチゴと名付けられたそうだ。
ナワシロイチゴの味はうまいほうだ。
当時のオレは、木イチゴの味にはなんの不満も感じなかった。
もっとも育ち盛りのころだったし、食べた量が少なかったためかもしれない。

 収穫した場所は田んぼのわきの方だったが、そういう場所はよく刈り取るせいか、木いちごの群生というほどの大きな株は見かけなかった。
当時としては遊びの一つとして木イチゴに関わったわけで、さほどこだわりがあったわけじゃないよ。
あれば食うし、なければかまねえや、ってな感じだったかな。

近所で木イチゴ探し
 オレはいろいろな果樹をたくさん植えたけど、すぐに収穫できるようになったわけじゃないんだ。
成り出すまでが大変でやんの。
収穫が始まるまでは店で果物を買うことも多かったし、野生の果物についてもいろいろ探したもんだ。
オレは最初ラズベリーは栽培していなかったこともあって、その代わりに野生の木イチゴを採りに行くようになった。

 近所で木イチゴを本格的に探したのは、最初は一九八九年(平成元年)だったかなあ〜。
初夏の晴れた日に自転車を走らせて、木イチゴを探すのは楽しいものだ。
幼いころの記憶を便りに、最初かつて食べた場所にも行ってみた。
が、そこにはあまり生えていなかった。

 しょうがねえな。
仕方ねえから、自転車で探し回ることになった。
オレが住んでいるのは茨城県で、台地と低地の土地柄だ。
台地と低地の間は、山林の傾斜地がほとんどなので、オレが探したのはもっぱらここだ。
なーに、自転車を走らせて斜面を見ていけばいいので簡単だ。

 別に山林の中に入るわけじゃない。
木イチゴはむしろ、道端の方が日当りがいいせいか、道ぞいによく生えている。
山中にもあるだろうけど、ヤブに入るというのは結構めんどくさいし、第一、木イチゴにはトゲがあるから、ヤブに入ったら痛くてたまんねえよ。



 で、自転車を走らせていたら、ありましたねえ〜、木イチゴが。
どれも赤い実のタイプだ。
味もなかなか良い。
外観などの特徴から「ナワシロイチゴ」という種類らしい。
とりあえず「ナワシロイチゴ」ということで、話をすすめてみるとするか。

 野生の木イチゴ収穫が意外とうまくいったので、その後も季節になるとオレは探しに行くようになった。
このナワシロイチゴの熟期は、茨城県の常北町では六月中旬だ。
なにしろオレが植えた果樹は、収穫がまだ少なかった。

 だから、ナワシロイチゴをせっせと探しに行ったわけだ。
だが、このナワシロイチゴは、いくらでも収穫できたわけではないんだ。
木の数がどうも少ない。

 自転車で探し回ったんだけど、他にもライバルがいたようで、食べられた形跡がある。
う〜む、甘いお菓子が出回っている現在では、木イチゴはあまり人気ないと思っていたが、そうでもないらしい。
もっと多くの木イチゴは収穫できないかと、あちこち探したんだが、あまり見かけなかった。

 以前にたくさん収穫した場所に行っても、同じような収穫ができなかった。
木イチゴというのは繁茂の場所が変わりやすいのか、昔に採った場所に木イチゴのヤブが残っていても、株に元気がないというか衰えたみたいだった。

 毎年、同じ場所では繁茂しにくい植物なのかもしれない。
原因はよくわからん。

北海道で木イチゴのジャム作り
 一九九一年(平成三年)の夏、北海道に旅行に行った。
キャンプしながらの自転車旅行だったけど、そのとき木イチゴをたくさん見つけたんだ。
この木イチゴは、とてもうまかった。
あまりにもたくさん実があったので、ジャムにしてみた。

漫画
1991年12月 マンガ執筆

写真
なべで煮ようとしているところ

 ジャムを作ったあとに、食パンを買ってきて、塗って食べた。
煮すぎて味が濃くなってしまったけど、うまかった。

写真 写真
10年後に北海道の同じ場所を再訪して見つけたもの
2001年8月15日撮影

黄色の木イチゴを発見 一九九七年
 野生の木イチゴについても、その後も毎年のように探していたが、新たな発見があった。
一九九七年(平成九年)六月一日のことで、場所はオレの家のすぐ近くではないが、車で二十分ぐらいの所。
そこで、黄色の木イチゴを大量に見つけたんだ。
赤色の実でなく、黄色の実というのが、オレにとっては珍しかった。

 味はとてもうまかった。
しかも沢山の実がなっていた。
実のサイズは大きいし、うまいし、また、外観および色もいい。
すっかり気にいったよ。
この黄色の木イチゴは近所では全く見かけなかったが、ちょっと離れた土地では、こんなにたくさんあるのが不思議だった。

 樹林の中に生えていて、日当りはあまり良くなかったが、なぜかよく成っていた。
熟期はナワシロイチゴよりも早かった。
植物図鑑で調べたところ、黄色の木イチゴには他にカジイチゴというものもあるが、オレが食べた木イチゴは枝にトゲがあるから「モミジイチゴ」という種類のようだ。


モミジイチゴの収穫 一九九八年
 一九九八年の初夏、ラズベリーの実がまだ熟していなかったころ、野生のモミジイチゴを早くも収穫することができた。
収穫したのは五月三十一日のことだ。

 楽しい収穫のシーンについてだ。
自転車に乗って探したが、さて、モミジイチゴは枝の下側に果実がつく。
一方、枝の上側には葉っぱがあって、覆いかぶさっている。
だから、一見しただけでは少々見つけにくい。
しかし、その気になって探せば、とくに問題なく、ちゃんと見つかった。

 収穫した木イチゴは、近所のヤブに生えていて、すべて黄色の果実のものだ。
このモミジイチゴの味は、かなりウマイ。
オレはとても気に入っている。

写真
近所のヤブで見つけたモミジイチゴ 1998年5月31日撮影

 山林ぞいのヤブでは、まあまあの量の収穫だった。
見つけてどんどん食べたが、どうも果実がイマイチ少ない。
仕方ないので、昨年大量収穫した森林公園へ向かった。
森林公園というのは、茨城県の水戸市にある自然公園というか、森林が主体の公園だが、昨年(一九九七年)そこでたくさんのモミジイチゴを見つけていた。

 で、再び行ってみたわけだが、う〜む、昨年よりだいぶ木イチゴが少ないぞ。
人為的な影響ではなく、木イチゴというのは年ごとの変化が激しいらしいな。
その場で食べるくらいはけっこう収穫できたけど、この日の総収穫はジャムにするほどには採れなかった。
まあ、仕方ないや。

 この黄色いモミジイチゴを収穫した時期では、赤い木イチゴは収穫ゼロだった。
この時点では早すぎたようで、赤いナワシロイチゴはまだツボミの段階だった。
もっと日が経ってからの方がよさそうだ。
ふむふむ、モミジイチゴとは熟期が違うんだな。

 一方、オレが庭で栽培しているラズベリーも、これまた収穫時期が遅いようだ。
多分、六月下旬になりそうだ。
ナワシロイチゴと同じ頃だろうな。
なにしろ六月十四日の時点では、まだ一粒もラズベリーを収穫していなかった。
もう少し先のようだ。

ナワシロイチゴ探し
 一九九八年七月六日に、近所にナワシロイチゴを探しに行った。
ナワシロイチゴは赤い果実で目立つから、あればわりと簡単に見つけることができる。
それが今回はなかなか見つからないでやんの。

 自転車でずいぶん走ったわりには、果実は十個ぐらいしか見つからなかった。
原因は、多分、時期が遅かったためだろうな。
オレの推測では、ナワシロイチゴは六月いっぱいで、七月では遅すぎた。

写真
これはどうやらニガイチゴらしい

 赤い果実のつぶつぶは大きめだ。
食べてみたら、酸味と甘さはあったが、なんというか、やや苦い。
これはどうやらナワシロイチゴじゃなくて、ニガイチゴらしいぞ。
あんまし甘くねえし、にげーぞ、これは!。
でもまあ〜、野生の植物に文句言ってもしょうがねえや。

モミジイチゴの収穫 一九九九年版
 一九九九年の五月下旬ごろ、野生の木イチゴのモミジイチゴを収穫しに行った。
熟期はいつも五月下旬から六月上旬ごろで、収穫時期を外すと一粒も収穫できないから、時期には注意している。

 自転車で近所のヤブに出かけて、狙っていたモミジイチゴを発見!。
いつもながら鮮やかな黄色で、とってもオシャレな感じのする果実だ。
味もうまい。
サイコーだ。

写真
収穫したモミジイチゴ 1999年5月22日撮影
収穫時期がとても早く、梅雨入りの前に収穫できる

 あまり大量には収穫できなかったので、ジャム加工とかは無理だった。
収穫が少ないのは、ま、仕方がない。
とはいえ、野生の植物だから、育てる手間はなにもしなくてもいいので、楽だ。
収穫と、食うだけ、だもんな。

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