ヤマにナシ有り
 オレんちでは梨は植えていないが、茨城県は梨の商業栽培は盛んであるものの家庭栽培ではほとんど植えられていない。
病虫害に弱くて、栽培が難しいからだ。
だが!、農薬が無かった昔にも梨はあった。

 時は、一九九〇年の八月のこと(もう十年以上前の昔話じゃんか)。
自転車旅行で、オレは福島県の山間部に向かっていた。
山奥に向かって走らせ続けて、ダムのそばを通り抜けて、千メートル級の標高も自転車で越え続けた。
涼しいか?。

 いや、それがな、旅行中は雨が多かったんだ。
だから全身ずぶぬれで、真夏だというのにブルブル。
標高が高いため、雨雲が低空?を浮遊していて、道路からたった二十メートルぐらいの高さを流れていくんだ。
雲というのは近くで見れば境界がボヤ〜ッとしていると思っていたが、そのわりにはクッキリしていた。

 小さな雲の固まりが、ゆっくりと、くっきりと流れてて、それに超接近できたので、見慣れぬ光景に感動する。
そうはいっても、天気も気分も湿潤悪寒陰気憂鬱で悲惨な状況だったが、今からみればおもしろがってこうして書いてしまうけどな。

写真
この写真はオレが撮影したものではなく、
別ホームページから引用したものだ。
オレが見たのはこんな感じだったが、記憶イメージ的には
果実はもうすこし小さめで、左側中央の梨サイズぐらいか

 と、走行中に、大木の下に実がごろごろ落ちていた。
なんじゃこれは?と拾ってみると、梨だ。
直径五センチくらい。
かじってみると梨の味がするが、問題は中身が虫だらけというか腐り気味というか食べるのは難しい。
芯がでかくて、食べられる果肉の厚さは、表面五ミリくらいだったろうか。

 山に生えるからヤマナシ!。
道ばたでオレが見かけたのは、野生の梨というわけでなくて、ちょっと品種改良された一昔前の梨らしい。
わりと涼しい気候を好むようだ。

 車で山間部に出かけても、晴天快晴であればさわやかな景色に見えただろうし、走行中の車からは道端の果樹は見つけにくいし急停車しにくいので、いまさら再度体験するのはなかなか難しい。
いや、あの自転車旅行はキツかったからもう再度体験したくないけどさ、家庭で最新のナシ品種栽培は難しくても、味やサイズにこだわらなければ、放任状態でも育つ梨はある、というお話でした。

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