なんだなんだ?、笠間クラインガルテン?
 真冬の農産物直売所はガラクタが放り込まれてホコリを被り、放棄された畑では枯れ草が生い茂る。
道端に白いゴミが光り、不振コンビニ店は閉鎖されて、むなしい空き家がテナント希望者を待つ。
田舎の農村はたそがれてんだか、本当にくたばっているのか、若い人が農業をやるのは減少の一途だと思うが、田舎でもオシャレな三つ星フランス料理店はないものか?。

 せめて栃木県の那須高原だったらあるのに、とか思いつつも(那須高原には御用邸もある)、元旦から茨城県内のドライブに出かけてみた。
産地直売所のボロい掘っ立て小屋でなく、喫茶店風のオシャレな直売所はないか?、できれば果樹園にレストランを併設してフルーツポンチを発売中とかさ。
といっても、そんなの無理難題な願望だから無くてもしょうがないけど、クルマで走り続けた。

 山間部の道路右側に、バンガローらしき黄色い建物を多数発見!。
なんだなんだっ?、アレは?。
このまえ来たときは、無かったハズだ。
別荘地開発か?、キャンプ場か?。
ちょっと寄ってみる。

写真写真
冬の季節のためかハーブは少なく、普通の冬野菜が多い 2002年1月1日撮影

 なになに「笠間クラインガルテン」というらしい?。
クラインガーデンの名前は聞いたことがあるが、ガルテンとガーデンは同じ意味だろう。
都市生活者が週末に田舎に来て、小さな家屋に泊まりながら家庭菜園を耕して、休暇をのんびり過ごすレジャー?のことだ。
市民農園の超本格版とでもいうべきか。

※クラインガルテン=ドイツ語で“小さな庭”という意味。

笠間クラインガルテン リポート
(2003年3月1日時点のURL)

クラインガルテンでウロウロ
 ともあれ、さっそく見て回ることにする。
小屋というか、別荘というか、クラインガルテンというのは期間限定の庭付き貸し別荘と言っていいと思うが、建物は新築だったのでどれもピカピカだ。
各小屋の前には、一アールくらいの庭というか家庭菜園の畑があって、そこを見ると、野菜があるある。
ハクサイ、大根、ネギ、小松菜、イチゴ、ハーブらしきよくわからない枯れ草などなど。

 ハーブや観葉植物が多いと思ったが、そんなに多くなくて、フツーな野菜がいっぱいある。
注目すべきこととして、雑草の生え具合や管理具合を見ると、どのくらいの熱心さでやっているかがすぐわかることで、「皆、恐ろしく熱心にやっている!」ことだ。

 野菜の管理はテマヒマがかかるが、菜園の作物を見ると、小まめに手入れされていることがわかる。
一月一日の元旦だったので、人はほとんどいなくてガランとしていたが、駐車場の数少ない車のナンバープレートを見ると東京都足立区のものがやや多かった。
都内から片道ざっと一時間半かかるかな。

 ここ笠間クラインガルテンは、二〇〇一年四月にオープンしたばかりで、まだ一年も経ってなくて、関東地方では初めての本格的クラインガルテンだという。
契約期間は一年ごとで、最大延長五年で、使用料は小屋つきで年間四十万円。
四十万円か!。
小屋といっても、ガス水道付きで宿泊可能で、ほとんど「別荘」なので、買えば最低一千万円はかかるだろうが、賃貸で年間四十万円は安いか高いのかよくわからん。

 農業界は衰退気味なのに、ここのクラインガルテンだけは、突出して小面積高額投資で、作物は極少量生産で、面積あたり超高額負担料で、だけど応募者多数のためキャンセル待ちの大繁盛ぶりで、夏の気候が涼しいわけでも景勝の土地でもないし、菜園生活ができることが一番の魅力かもしれないが、従来の農業観からは理解しがたい光景だ。

クラインガルテンのフルーツ分野
 オレが興味を持ったのは、なんといってもフルーツ分野だ。
このクラインガルテンは菜園に樹木を植えてはいけない規則となっているので、各戸に果樹は植えられていないが、多くの家庭菜園ではイチゴが植えられていた。

 道路沿いの石垣の間にもイチゴがぎっしりと大量に植え付けられていて、なんつーか、石垣というと、すぐに石垣イチゴを連想しやすいせいか、わざわざ大量に石垣の間に植え込んである。
イチゴといっても小粒のワイルドストロベリーのようだ。
これは四季成りのはずだから、春から秋にかけて行けば、味見できそうだなっと。

 常緑タイプのグミの樹が植えられている場所があり、常緑のグミというとナワシログミだったか、グミの木も道路沿いに一列に植えられていて、果樹の垣根にするみたいだ。
このグミは渋いらしいが、春一番で収穫できるはずだ。
常緑で寒さに弱くて、このあたりでは珍しい種類のせいか、花は咲いてても幼果の成り具合はかなり悪かったので、あまり収穫できないかもしれん。

 もしかして、ブルーベリーの垣根はないか?と、偵察して回る。
フフ、一応あったよ。
垣根用というわけではないが、ちゃんと植えられている区画があって、来年からはボチボチ収穫が始まるだろう。
だが!、隣接した広い畑では、もっとた〜くさんのブルーベリーが植えられているのを発見した!。
写真
笠間クラインガルテンはゆるい南東斜面にあり、裏の斜面はブルーベリー畑だ
2002年1月1日撮影

 これは近所の農家による栽培らしく、ビニールの黒マルチで雑草防止の対策がとられていた。
なぜ黒マルチをしたか?、その答えはすぐにわかった。
数年前に植えられたらしいブルーベリー畑もあって、そこは雑草がぎっしり生えてて、草ボウボウなんだ。
雑草対策に黒いビニールを敷くのも納得したよ、ホント。

急成長中!クラインガルテン
 一アールの畑のために年間四十万円もカネを払う、というのが信じられないが、小さな子供を連れた一家がクルマを飛ばしてクラインガルテンまでやってくるのだから、え〜っホントか〜って気分と光景だ。
土地の広さは、庭一アール、畑一アール、建物十坪、合計七十坪。
立派なログハウス付きで、宿泊可能で、菜園付きで、年間で四十万円というのは、じつは大変安いらしい。

 事業主は笠間市役所だが、先駆的なクラインガルテンに挑戦して家屋五十戸をいきなり建設するというのは、ちと怪しすぎる、どこかのモデル地域をパクったに違いないと思っていたら、後日、雑誌であっさり判明した。
長野県四賀村がモデルケースらしい。
写真
この写真は、四賀村ホームページから引用したものだ(現在リンク切れ)

 四賀村のクラインガルテンは、すでに約十年の実績があり、東京から遠い信州四賀村が成功しているなら(菜園は毎週のように通わなくてはならない)、東京にさらに近い茨城県の笠間市なら充分に成功の見通しがある。
成功の見通しについては、すでにわかっている人は大勢いるようで、クラインガルテンから見下ろす一帯は、大規模なビニルハウスが建設されて、イチゴ狩りを二〇〇二年の冬に初オープン!。

 オレもさっそくイチゴ狩りに二〇〇二年一月十九日(土)に行ってみた。
栽培者もハウスイチゴを栽培するのは初めてだったのか、オープン初日だというのに完熟イチゴが少なくて、草株の茂りも寂しくて出来はイマイチ。
珍しくモタついている様子を見ることができたが、来年以降は経験をつけてすぐに上達するだろう。

 クラインガルテンの南側にはイチゴ畑ができて、一方、北側にはオシャレな喫茶店がすでに開店済み。
陶芸品とケーキとカフェの素敵なお店は、オレ以外にもお客が欲しいと感じたが、客が少ないのは真冬の夕方だったせいかもな。
喫茶店の隣はブルーベリー畑(まだ苗木の段階)だから、初夏の良い季節にまた訪れたいと思う。

笠間クラインガルテン栽培クラブ

おまけ情報
日本の市民農園
(2002年4月10日時点のURL)

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