ブルーベリー用の杉皮、木材チップ
 宮城県の蔵王(ざおう)ブルーベリー園に観光摘み取りに行った。
そしたら、たまたま、ブルーベリー専門家の横田先生がいて、園内を紹介してもらうという幸運に恵まれた。

写真
2005年7月10日撮影

 ハイブッシュブルーベリーの木がでかい。
一・五〜二メートルくらいもある。
六年くらいだったか、せいぜい五年だったか、苗木を植えてから五年くらいのはずで、年齢が古くからあるというわけじゃない。

 それでも、苗木の成長が早くて凄くて四十〜五十センチは毎年伸びているようだったので、毎年四十センチも、タテにヨコに急激に伸び続けていれば、五年で高さ二メートルの大きなハイブッシュブルーベリーになるわな。
オレは、数年でこんなに成長して大きくなったハイブッシュブルーベリーは今まで見たことがないぞ。

 先生が言った。
杉皮のチップを敷き詰めてマルチにしているという。
確かに超大量に敷いてある(厚さ十〜二十センチ位)。
一〜二反ぐらいずつの区切ったブルーベリー畑(合計二ヘクタールぐらいあるらしい)に、杉の皮が敷き詰めてある。

 杉の皮のマルチは良い、という話で、廃棄物として捨てられていた皮やノコクズが利用できてよいという。
が、オレは疑問があった。

 針葉樹というものは、従来の農業観では、肥料には『有害』とされていることだ。
針葉樹には、腐りにくい成分、殺虫する成分があるため、そのため腐りにくくて、これは建築材としては優れているが、堆肥としては不適とされていることだ。
針葉樹の松や杉には、リグニン、タンニンなどの植物の発育を阻害するのを含んでいる。

 だから、堆肥に使うんなら広葉樹とか、ワラだのモミガラだのが良くて、有害物質を含んでいない材料が良いとされている。
さらに、ナマの原料じゃなくて、堆肥というものは分解させてから使うこととされている。
というわけで、針葉樹の原料、おまけに未分解のもの、をブルーベリーに使っても大丈夫なのか?とオレは疑問があった。

 農業の本には、堆肥の重要性だの有機物補給だのEM菌の分解だの載っているが、針葉樹の未分解堆肥を使っていいなんてことは載っていない。
使ってはダメ、ということになっている。
ブルーベリーは、その堆肥の概念を否定しているわけだ。

 ブルーベリーの本みても、ブルーベリー栽培には有機物でマルチしろって、マルチ、マルチって、投入さえすれば良い結果が返ってくるかのよーなマルチ商法の説明文みたいになっちゃっているし。
なぜ未分解有機物や針葉樹材の投入でいいのか、その理由や根拠を述べた本は、オレは今まで記憶にないぞ。

 ブルーベリー専門家の横田先生はあっさり答えた。
確かにそのような阻害成分を含んでいるが、不活性になっていて悪影響しない、という意味のことを言った。
現に試験で、杉皮だけ使って水耕栽培でトマトを栽培して、別に問題なかったという。

 意外だとオレは思った。
それどころか、ニュージーランドやカナダの視察では、挿し木床に針葉樹オガクズを使っているという。
挿し木に!。
これもオレには意外だ。

 挿し木して発根させるとき、それはとても微妙な時期であり、そこに発育に阻害しそうな針葉樹オガクズを混ぜるなんて…、絶句するような栽培の仕方だ。
でも、現実にそれでできるという。

 蔵王ブルーベリー園の園内を案内されて見て回った。
どの木も発育が抜群にいい。
しかも木が大きい。
まだ植えて数年しか経っていないので、本格的なブルーベリー園として開園するというまでいってなく、苗木の成長を優先しているわけだが、もう充分すぎるほどでっかい木だと思う。

 地面には杉皮マルチがしてあって、それは訪問当日もダンプで追加投入が行われていた。
この杉皮マルチに根が張っているとのことなので、地面をちょっとほじってもいい了解を得たので、オレはちょっと根元をほじくってみる。
ほじったときにプチプチと細根を切る感触がして、たしかに細かい根がびっしり張っているようだった。

 底近くの水分が多い奥の方に根がよく張っているようなので(表面は乾いていて根が張っていない)そこまで掘っていったら、蔵王の黒土の火山灰土壌に到達して、意外なことに、その土はサラっとしていて(火山灰)指をヨコに動かしてもプチプチ感がない。
ハイブッシュブルーベリーは、有機物のあるところ『だけ』にしか根が張らないようだ。

 杉皮チップについてだが、これは他の園での観察でもあるが、杉の皮破片に、ハイブッシュブルーベリーの根っこが直接根付く、というマカ不思議な現象を示していた。
ハイブッシュの根は細くて弱々しくて、固い土壌では発育不良になるからよく耕して柔らかくするとかかんとかそんな情報なら知っているが、杉のナマ皮に直接根がびっしり伸びている姿を見ると、いったいなんなんだ?。

 堆肥の話はなんなんだ?、針葉樹は有害じゃなかったのか?。
杉の皮を園内にぎっしり敷き詰めると、皮が水分をよく含んで夏でも水をやらなくて済む、という話を別の園で聞いているしな。
確かに、湿っていたな。
どうやら、針葉樹のナマの皮と、ブルーベリーは相性がいいらしいのだ、不思議なことに。

建設現場で、巨大なチップの山発見
 そんな現実の姿を見て、そんなある日のこと。
オレんちの近所でお店の造成工事が始まった。
杉林だったが、それを皆伐してサラ地にするのは当然としても、意外なことに、切った材木や木の根っこを、巨大な機械に放り込んで、木っ端みじんのチップにして、山となって積み上げられた。

 まあ、木材は邪魔だから、使えそうな太い材木は売却したのかもしれないが、葉っぱや細かい枝、木の株だの、とくに木の根元はパワーショベルで引き抜いて、それをチッパ−だったか機械名ガラパゴスだったかに放り込んで、粉々にしているのだった。

 今までは、そんな木材のクズは焼却されていたのだが、野焼きは法律で禁止になった、という事情がある。
焼いてはいけないわけで、仕方ないから、粉々にしているのだった。
で、木材のチップにしているわけだが、杉の根っこなどなので、土が大量に混じっていて、チップとはいえ、真っ黒なのだ。

 とてもじゃないけど、紙の原料にはなりそうもない。
牛舎の敷きワラ代わりにも使えそうにないので、堆肥にでも転用されるのだろうが、そうはいっても堆肥には評判の悪い針葉樹だし、破片があらくて二十センチくらいの棒も混じっているから、堆肥にも使えそうにない。
今回は竹の破片も混じってたし。
まあ、ネットで調べた限りでは、畑用の肥料にするときは、さらに細かくもう一度専用チッパ−にかけて小さな粒にするらしいけど。

 さて、オレが見た、工事現場で山となって積み上げられた荒っぽい木材チップだが、ブルーベリーのマルチにちょうどいいと思って、現場のプレハブに行って、貰えるよう交渉してみた。
後日連絡があり、OK、くれる、という。
不法投棄にならないよう、何に使うのか報告する必要があったらしくて、ブルーベリー用の堆肥ということで幸い通じたみたいだ。

 なにしろ現場は土でぐちゃぐちゃの工事現場だ。
四輪駆動の軽トラで近付いて、荷台にはコンパネを立ててかさ上げして、チップを大量に積めるようにした。
土砂と違って木材チップは軽いので、かさあげしても、耐用荷重内に収まる(たぶんな)。

 巨大なパワーショベルが動いて、ドドッ!、二〜三杯で軽トラの荷台は一杯になった。
夏だというのに、モウモウと湯気がたって、熱いでやんの。
のべ二、三回往復して、畑に運んだ。

 仕事があったり、雨が降ったりして、時間の制約のため、あまりもらえなかった。
オレがもらった量は、そうだな、チップの山のうち、これが巨大な山で、ほんとは全部欲しかったんだけど、うちの畑はダンプが入れない狭い道だから、軽トラでしか運んでおらず、山のうち、せいぜい一%ぐらいしか貰っていない。

 工事現場だから、そこにあったチップの巨大な山は、一週間ぐらい経ったらどこかに捨てられてしまった。
惜しかったなあ。

 いきなりチップに苗木を植えるのは心配だったので、ピートモスに混ぜることにした。
ピートモスを水に混ぜるのは、水をなかなか吸わなくて大変なことは有名だが、この木材チップ(土付き)と一緒にまぜると、まざりやすくてこりゃ便利だ。
(混ぜずに根元に敷いてしまったものもあるが。)

写真
2005年10月10日撮影

 さて、苗木を植え付けたところ、根の発育も、水分保持もなかなか良いようである。

※NHKによる能登町の木材チップ番組を教えていただいた方に感謝いたします。見ておきました。

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