秋に芽接ぎして、その結果いかに
 ブルーベリーで、秋に『芽接ぎ』というものをやってみた。
この『芽接ぎ』の結果はいかに?。
昨年(二〇〇八年)の秋に、穂木、台木ともに充実した元気のよいシュートの枝を利用してやってみた。

 シュートとはブルーベリー専用の言葉といってもいいかもしれないが、果樹でいえば徒長枝に相当する。
接ぎ木するには、徒長枝が良い。
発育不調の台木とか使うと、活着率が悪かったなー。
だから、台木、穂木ともに、徒長枝のものだけ使うようにしている。

 徒長といえば、いたずらに長く、という意味であって、果樹界では、徒長枝といえば無駄の典型、無用の枝みたいな言い方をする。
まあ確かに、徒長枝は、果実を成らせる枝としては不適当だがね。

 それが接ぎ木をするとなると、果実が成るような普通の枝よりは、徒長枝の方が適しているという逆転現象がおきている。
無駄、無用の枝という本の解説はどうなったんだよ?。
まったく、これを知らずに、オレは失敗したうえに、ずいぶん年月を無駄にくってしまったよ。

 年月返せってんだ。
もっとも、オレの失敗がこのサイトを読んでいる人にとってはむしろ勉強になる、というメール投稿があるのも事実だが。
ともあれ、昨年やった芽接ぎの話について以下述べてみよう。

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今回の芽接ぎ用ではないが、別件で使ったときの徒長枝(シュートまたはサッカー)

 果樹園芸の専門書で、芽接ぎというのを見ると、メンドクサイことがずいぶんと書いてある。
あー、かったりい!。
だから、オレが簡潔にこれから言ったる!。

 まず、穂木をとる。
さっき言ったシュートとかの徒長枝を使う。
切り取ってきた穂木の根元に、接ぎ木ナイフを斜めに入れる。
使う芽は、充実した良いものから先に使いたいので、穂木の先端からでなく、基の方からの芽を使う。

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 芽接ぎをする時期の九月といったら、まだまだ暑い。
というわけで、指先に持ったままだと、切り取った小片がどんどん乾いてしまう。
そこで、穂芽の小片は、自分の口にくわえてしまう。

 水に漬けるんじゃなくて、ツバをつけるというのも、そもそも、芽が唾液を吸い上げても大丈夫か?、という気もするがな。
まあ〜、大丈夫のようだ、多分。

 さて、口にくわえている間に、台木に接ぐための切り込みを入れなくてはならない。
台木は、地面から伸びてきたサッカーを使う。
または根元から伸びてきたシュートを使う。

 白くなった古い幹を使うこともできるが、それは木の幹が硬くてやりづらい。
サッカーやシュートの方が比較的やわらかいし。
その根元に、接ぎ木ナイフで上から切り込みを入れる。
そして、真横または斜めからナイフを入れて、芽接ぎの小片の形に切り取る。

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幹に切り込みを入れたところ。試行のひとつでV字型に切り込んでみた。

 そして、いよいよ合体だ。
口にくわえていた芽の小片を差し込む。
そしてここで、新兵器の登場となる。

新しい接ぎ木テープ
 新兵器といっても、接ぎ木テープの一種だ。
なんでも、時間がたつと劣化して破けるというものだ。
今までの接ぎ木テープは、丈夫な性能のビニルテープゆえに、芽が伸び出してもテープを突き破ることができず、穂木が太りだしてもテープで締め付けてしまい、そこだけ幹がくびれてしまったりしていた。

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NEW ワンタッチ接ぎ木テープ、と書いてある
2009年3月19日撮影

 それを改良して、テープが早く劣化するようにしたのが、この新型テープだ。
メデールというものが有名で、これは、芽でーる、という意味のことだと思うが、これの類似品をオレは買っておいた。
なぜ類似品を買ったかというと、オレの近所で、類似品がたまたま安く売られていたから。

 オリジナルのメデールは近所の店では売ってなくて、通信販売で買わなきゃならないので、振込とかがめんどくさい(値段も倍以上するらしい)。
さて、園芸書によると、芽接ぎのときのの説明というのは、T字型に皮をはいで差し込むとか、芽には葉柄を残して、そこだけよけてテープを巻くとか、すっごく面倒なものだ。

 実際にやればわかるが、暑い九月のさなかだというのに、つらそうなやり方が載ってる。
まあ、オレは一挙に簡略化して、台木の凹部分に、芽の凸部分をはめこんで、新型接ぎ木テープで巻いてオシマイ!、だ。
こうすると、超・早い。

 葉柄を残す?。
いやいや、とっちまったよ。

 芽のとこだけテープをよけて巻く?。
いやいや、新型接ぎ木テープは芽が貫通して伸びてくるというので、そのまま芽の上から巻いたよ。

 巻き終わったら、テープを結んで縛る?。
いや、この新型接ぎ木テープは、ちょっと引っぱりながら巻くと少し接着力がでて、くっついてしまうので、巻き付けてそのままだよ。

 というわけで、新しい接ぎ木テープの威力はすごい。
便利だぜ。
従来のやり方よりも、作業が簡略化できる。
時間も短縮できる。
本数もこなせる。
いざ、この芽接ぎの活着率はいかに?。

この芽接ぎの活着率はいかに?
 なになに、園芸の参考書によると、芽接ぎしてから、一週間か十日ほどたつと、葉柄がぽろっと取れるという。
取れたら成功だという。
失敗したものは、葉柄が取れないまま、芽接ぎの小片がしぼんで茶色になっているという。
ふむふむ、そうか。

 そうはいっても、オレは葉柄を残さずに取ってしまって、その上からテープを巻いたからな。
テープを剥がさないと確認できん。
十日ほどたってから、確認のため、テープを剥がしたうえで確認してみた。
どれどれ…。

 芽接ぎの小片は、色鮮やかで、艶ツヤして生きているようである。
が、ちょっと障ると、芽接ぎの小片ごと幹からぽろっと落ちてしまうではないか!。
くっついてない。
やばいっ!。

 他のも続々とテープを剥がして確認したら、どれもこれもポロッと取れてしまう。
失敗だあっ!。
オレはショックを受けてしまい、その後は放置してしまった。
園芸参考書の書いてある通りにやらないオレは、こんなふうに何かと痛い目にあわされる。



 と思いつつ半年もたって、初春になってから、他に残っていた芽接ぎのテープを外してみた。
これがな、意外なことに、芽接ぎの小片が、どれも艶ツヤしてる!。
生きてるね。
そっと障っても落ちてこない。
切断面も盛り上がっている。

 なんだ、くっついていたんじゃん!。
成功していたんだ。
秋のうちは、接ぎ木部分が、面で付かずに点で付いていて、落ちやすかったのだろう。
よかったぁ。

 オレは安心して、他のテープを次々と外してみた。
ことごとく、くっついている。
うまくいってたんだ、大成功だっ。

 白い接ぎ木テープは、黒ずんでまっくろけだけどな。
おまけに、半年もたつと、テープが密着したまま、くっついてしまっているから、うまくはがせない。
というわけで、全部は剥がさずにしておいた。
そしたら、また一波乱やってきた。

 テープを剥がして、芽接ぎがむき出し状態になっていたものは、春の陽気で、乾燥して芽にシワがよってきた。
テープをはがしたために、過剰に乾燥してシワができたようだ。
接ぎ木でくっついたとはいえ、まだまだ養水分の流通が悪いらしい。
つまり、芽は枯死してしまったらしい。

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この芽片はいったん乾燥してしぼんだが、なんとか枯れずに芽吹いたところ
なお、発芽前に接ぎ木部分の上部で切断しておかないと、芽接ぎの所から発芽しにくい。
2009年4月10日撮影

 あちゃー。
テープは巻きっぱなしにしなければならないらしい。
オレは、またまたショックをうけて、そのまま放置しておいた。

 そしたら、秋も春もテープを剥がさずに、ずーっと巻きっぱなしだった残りの芽接ぎのものが、桜開花後の時期に次々と芽を伸ばし始めた。
テープが黒ずんだままの方が、黒で熱を吸収して枝も暖められるのか、芽吹くのが早いようだ。

写真
これらは順調。2009年4月10日撮影
シュートが不足したので、木の上部で接いでおり、後日の接ぎ穂採取用に伸ばす予定

 テープのキャッチフレーズのとおりに、テープを突き破って芽が伸びてきた。
成功だっ!。

 ところで、最後にまたひとつの事例だ。
芽接ぎのとき、最後に余った枝の部分を、秋だが、テープでミイラ巻きして切り接ぎしておいた。
ひとつだけやっておいてみた。

写真
秋に切り接ぎしておいたものが、春になって芽吹いた
2009年4月10日撮影

 そもそも秋の接ぎ木は、なぜ切り接ぎじゃなくて芽接ぎなのかというと、たぶん蒸散が激しすぎるから、穂木部分が小さい芽接ぎなんだろうとオレは推測する。
だが、ミイラ巻きして密閉しておけば、蒸散しないですむ。

 春になってから、芽接ぎのものよりも、切り接ぎしたものの方が、芽吹きの勢いが良いようだ。
穂木が大きいぶんだけ体力があるのだろうか。
ともあれ、だいぶ失敗はあったが、オレがやった芽接ぎは、約半分の成功率だった。
成功するためには、前もって失敗しておく必要があると、オレとしては弁解しておこう。
2009.4.25 記
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