これから成るところ、そのとき
 頓珍漢な返事のままでは変だから、しゃべるならやはり、オレは自分でやっている果樹園のこれからの良いところを強調すべきた。
果樹園栽培というのは、植えて数年は収穫も収入皆無で、それがつらいのだが、それは過ぎてようやく収穫の年が近付きつつある。
「今、那須高原で植えていて、土日だけでやっているが、そうだな、数年以内には三百万稼いで独立するつもりだ。」誇りの言葉のつもりだった。

 その人は、「えっ、三百?」と言った。
少なさに驚いたらしい。
と表情から伺えた。

 オレは「でも、借金ゼロだし、これは土日だけでの作業での話だし、年々大きくなるし、忙しいのは夏だけで、半年以上の休みがあってこの額なら、田舎でこんなに有利な起業の話って滅多にないよ、休み中の冬はオレは他に働きに行くことだってできるし…」
あわててオレは言った。

 果物の木を植えて、成るまでに何年かかるか?は、実際に大変年月がかかるので、大きな問題だ。
また成り出しても、最初の数年は収穫量が少ない。
その間は、無収入状態で出費ばかりが続くわけで、この事情も相手の人に知って欲しかったが、オレ自身もできれば年数はかからない方がよいと思っているくらいだから、この点はオレは特に言わなかった。

 むしろ、これからの作業で、補助として男手が必要なことを強調した。
建物の中でケーキ作りとかはするとしても、屋外で作業する人は必ず必要になる。
屋外は汚れる作業だ。
特に草刈りの作業というのが、この仕事が膨大の極みで、むちゃくちゃ大変だ。
指の爪なんて真っ黒になってしまう。

 これはオレが一人でやるから、女の人は建物内で好きなだけお菓子作りをやってていい。
そりゃあ都会の男の年収と比べれば少ないが、でもこれを全て奥さんの収入にするとすれば、パートに出るのと負けない金額だと思う。
どうも、オレはまた一人でまくしたててしまうようになりつつあった。

つづく

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