カネが無いことに困った。
再就職活動をしたが、これが甚だしく苦戦。
それでも、時給ちょうど千円の派遣社員の仕事を見つけて、残業含めて初任給から二十万円前後でありがたいが、だけどボーナスが存在しない、って打撃が痛いぞ…、年収二五〇万円なり。

　三十代後半男としては年収がものすごく少ないが、これでもうちの地方の就職状況ではまだ良い方だ。
アルバイトや無職よりはなんぼかマシ。
ふん、年収が上がる見込みもねえしよ、正社員になることも制度的に無理だし、このまえもいきなり採用打ち切りで解雇されそーになったし、これじゃまともに家庭生活ができるわけねえだろ。

　社会の不満分子、潜在貧困を背景に、ブルーベリー園経営資本家を目掛けて独立解放戦争が開始された！。
現在、激戦中である。

　で、そもそも、ブルーベリーで生活するんだったら、どれくらいやればいいんだ？。
ふつう農業界では、一反（十アール）あたり何キロ収穫できるか？、というのが基準的な評価になってて、米なら反五百キロ（八俵ぐらい）、イチゴやナシが反二トンとか。
単位面積あたりの収量が多ければ多いほど良い、ということになっている。

　で、ブルーベリーは、一反あたり千キログラムぐらい、の収穫がある。
文献の資料での、大まかな平均だぞ。
しかも植えてから十年以上たった成木での量、だがな。
まあ、ベストの状態でだ。
一反千キロだ。

　で、一キロあたりいくらで売れるか？となると、二千円ぐらい。
これも良いときの数値だが。
ここで計算だ。
千キロかける二千円で、反あたりは…二百万円になる！。
だから、二〜三反も栽培すれば三〜四百万円になる。

　というのが露骨かつ簡単な説明かつ大まかでヌカ喜びの説明になる。
実際はそんなにいかねえから、低めに見積もる必要がある。
それはこれからオレが説明する。

　千坪ぐらいのちょっと広い畑があれば（千坪って約三反ね、農業の自営としては狭い方）これだけあれば年間二五〇万円ぐれえの収入なら実現できちまう。
農業に新規就農すると、収入の少なさと生活の不安定、というのが定番の不安要素となっているが、なにしろ、今のオレの派遣社員の生活も同じぐらい少ないし不安定だ。
たいして変わらん。

　ブルーベリーで、年収二百万円も売り上げあれば、税金引いて毎月一五万円ぐらいかな？。
農業法人に就職したときと、あまりかわらん。
派遣で定時に帰ったときの月給と、あまり変わらん。

　しかも、ブルーベリーの収穫期とフルに働く時は三ヵ月ぐらいで、あとは秋から冬ね、ずーっと休みで、六ヵ月の休暇付きだ。
年収二百万円で、休暇半年か！。
半年以上も遊べるんだったら、オレがやったる！。

　一反あたりブルーベリーは一トンぐらい収穫できる、という説明したけど、植えたばかりの苗木は小さくて収穫が少ないから、一反の面積があっても、収穫はずっとずっと少なくなる。
果樹というのは、成り出すまでに何年もかかるのが普通だから、これが注意点だ。

　ブルーベリーは、成り出すまではこれでも短い方だ。
ミカンとかリンゴは、成るまで七年ぐらいかかっちまうんだから。
ブルーベリーは、おっきな成木になるのに七〜十年くらいかかる。

　タテヨコ高さが二メートルくらいの木になるよ。
鉢植えのブルーベリーから見ると、たいへん大きな木に育つように見える。
これくらい育ったときで、一反（千平方メートル）あたり一トン（千キログラム）とれるわけだ。

　じゃあ、三年目ぐらいのときはどれくれー採れるんだよ？と、疑問点も湧くが、オレがごく簡単な答えを見い出してみた。
果樹というのは、文献でもとくに農業雑誌で、反何トンとれたとか栽培者の誇りをもった数値が掲載されるが、枝が伸びて、畑をほぼ一杯埋め尽くしたときに、最大収量となる。

　つまり、ブルーベリーは、埋め尽くして面積千平方メートルのとき千キロ採れるわけだから、一平方メートルあたり一キロ採れる、わけ。
一平方メートル一キロって、わかりやすくていい。
まあ、木のタテヨコ高さが一メートルくらいで、枝の広がりからみて一平方メートルくらいに育った木なら（樹幅1.2mぐらい）、これは生育途上の青年樹だけど、ごくおおまかな大予想として、果実は一キログラムくらいの収穫量。

　こんな木が、一反あたり二百本植えていたら、二百キロ採れる。
ブルーベリーは大体畑に二百本ぐらい植えるんで。
百五十〜三百本植えとか、栽植間隔によって本数が変わるが、とりあえず平均的な二百本のときの話だ。

　はやい話が、この二百キロで、四十万円になる、っつーわけよ。
五反も栽培すれば、せいぜい五年で二百万円が実現できちまう、という楽しい未来図が描けるわけだ。
五年か。
そうか、なかなか近い未来だ。
あとは増える一方だし。

※一般社会の投資事業で五年後でこの金額は、収支がかなり低い方だと思うが、果樹というか農業ではけっこうイイ方、だと思う、たぶん。