苦闘2012年 失敗の打撃でかいぞ
 以前、移植したフェスティバルに、接ぎ木した。
太枝を切り詰めて移植したので、あとでその切り口を見ると、接ぎ木するのにちょうど良さそうに見えた。
そこへ接ぎ木してみた。
その結果どうなった?。

写真 写真
2010年4月4日撮影
同じ木を左と右から撮影したもの

 接ぎ木したところを、夏が過ぎてから、よーく見てみた。
そしたらな。
接いだ穂が、ことごとく発育不良!。
あまりにも、伸びていない。

 最終的に伸びて使えそうなのは、1割ぐらい。
9割失敗で、すさまじい。
これほどにも不調になるとは思わなかったぜえ。
どうしてえ?。

 推測すると、移植のために根っこを切ったので、水分の吸い上げがうまくいかなかったんじゃないかなあ。
それで接ぎ穂が、水分不足になって、イマイチ伸びなかったんじゃないかなと?。

 それに、今回の接ぎ木は、ほとんどが高い位置で、やっていた。
高さ1m前後。
体験を振り返ると、ブルーベリーは高い位置で接ぐと、あまりうまくいってない。
逆に、ブルーベリーは地面付近の低い位置に接ぐと、これは比較的うまくいく。

 移植直後の接ぎ木は、移植にともなう植え痛みがあって、接ぎ木がうまくいかなかったのだろう。
また、ブルーベリーは高い位置で接ぐのはどうもうまくいかない、ってことで、痛い失敗と引き換えに、我ながら知識が身についた、といえなくもない。

一枝一花芽の秘策はどうなった?
 一枝一花芽の自称「秘策」というものもやってみた。
これもどうなった?。
それまでの毎年の経験として、ブルーベリーをぎっしり成らせた樹は、枝の衰弱がひどい、ことが挙げられる。

 熟す時期も遅い。
そこで、実の数を減らすことで、もっと早く熟させるようにして、実も大粒にしようという作戦だ。
そのため花芽の数を、枝先に一つずつまで減らした結果はいかに?。

写真写真
並んだ花芽を切り詰めて、一個にした

 今年の初夏に、じっと観察した。
そして、だんだんとわかってきたことは…。
実がなってない!。
まさかの結実率めちゃ不良!。

 これは…、春先にやや低温の日があったせいだと思った。
だが、他のブルーベリー園に行くと、正常に成っている。
オレの園だけ、結実不良だ。
オレの畑はあちこち分散しているのだが、いずれの畑も大不調。
明らかに、大失敗だ。

 今までこんな失敗は、無かったんだけどなあ。
昨年まで試した時は、うまくいったのに。
本格的にやった今年2012年に限って、なんで、こうなってしまったんだろう?。

 しょうがないから、残った果実を育てて、大事に収穫しようと思った。
しかし!。
ハクビシンが侵入したらしく、少ない成りの果実は食われまくった。
ひでえ!。
おまけに、トリの大群が来襲して、食い尽くしていった。
ひでえ!。

 防鳥網に関しては、他人の農園を見ると、近年は網を張らない園が多い。
というのは、ブルーベリーが、ぎっしりたっぷりと成らせていることで、鳥獣に食べきれないぐらい成ったことで、少々食べられたぐらいでは大丈夫だからだ。

 オレみたいに、結実数をぎりぎりまで減らせて大粒を狙ったりすると、結実数が少ないから、そのため鳥や獣に、根こそぎ食われまくりの惨状だ。
まさかこんな事態になるとは!。

 しかも、一枝一花芽にしても、さほど大粒になっていない。
中粒のままが多い。
また、早く熟すと思ったが、さほど早くなるわけでもない。
晩生のままが多い。

 なんだか、全否定だ。
唯一のとりえといえば、枝の伸びが、今までで一番よく伸びたかなあ〜。
ということぐらい。
大失敗といっても、全てを失ったわけじゃないから、枝の成長が良くなったことだけでも、認めなきゃあ…、やってられん。

失敗からの品種情報拾い上げ
 来年以降のために、なんとか使えそうな情報だけでも、拾い上げてみるか。
那須高原でのブルーベリー栽培は、お盆の時期に熟すのを狙って、オレは一枝一花芽をやってみたが、効果不十分だった。
というわけで、ラビットアイブルーベリーを那須高原で収穫するのはあきらめて、ハイブッシュの台木にしてしまおう。

 ハイブッシュの自根栽培は不調がひどいのでね。
で、肝心のハイブッシュブルーベリー。
那須で田んぼ跡地のオレのところでは、ハイブッシュの自根栽培は不調を起こして、多くの品種は壊滅状態になった。
失敗の打撃いたいぜ。

【ブリジッタ】
 が、ブリジッタだけは唯一の例外で、自根でなんとか育った。
接ぎ木は面倒なので、できればこのブリジッタを増やしたいと考えていたのだが…。
やや晩生のブリジッタは、那須高原では7月下旬に熟した。

 熟す時期が8月中旬であれば理想的なんだが、お盆の時期までは持たないな。
というわけで、ブリジッタは少数だけになりそうだ。
ブルーベリーは受粉用として、どのみち異品種を混植しなければならないのだから、現状維持のままオレは植えておくことにした。

【サミット】
 サミットはサザンハイブッシュに分類されている品種だが、低温にかなり耐えられる方だ。
那須高原ではマイナス10度ぐらいになるときもあるはずだが、毎年の試作でも問題はおきていない。
自根栽培でもかなり育つ情報を得ていたが、オレの栽培経験では、過湿の多い土地では発育は全く無理であった。

 よって、ラビットアイ台木の接ぎ木苗で育てている。
当初の見込みでは、那須高原では8月上旬〜中旬に熟すだろう、お盆の時期に間に合うだろうと予測していた。
だが、ここ数年の試作では、8月上旬が熟期のピークだ。
8月中旬のお盆までは、あまり持たない感じだった。

【バーリントン】
 これは当初バイト先で、ラビットアイ台の接ぎ木でもないのに美味で大粒のブルーベリーがよく育っているのを見つけて、穂木を貰ってきたという経路をたどっている。
品種不明だったので地名をとってキセと仮名をつけていたが、相撲の力士で稀勢の里(きせのさと)が茨城県出身だそうで、たまたま偶然だけど場所としては比較的近い。

 さて正体不明だったとはいえ、長い年月を経てわかったのは、ハイブッシュにハイブッシュを接ぎ木されていたもので、穂木はスパルタン、台木はバーリントンで、葉の形や枝の赤さが互いに似ているので気付きにくかった。
関東平野の台地では、バーリントンは自根でもよく育つので、でも小粒だから、スパルタンの台木にされてしまったんだろう。

 原木の地表付近からよく伸びた枝から穂木を採取したので、できあがった苗木は大部分がバーリントンとなってしまったのだが、一番の特徴は晩生であることだ。
エリオットの親品種がバーリントンになる。
こんなに晩生なら那須高原でお盆の販売用にイイかも!、とオレは思いついて、水戸の畑から引っこ抜いて、那須の休耕田に移植しておいた。

写真
バーリントンを収穫してショートケーキの箱に詰めたところ
2009年7月14日撮影

 その後は、よく育つと思ったら、移植してから育ちが悪い!。
水分過多の土地には不適のようだ。
関東平野の台地なら、とてもよく育ったんだけどなあ。
とりあえず、休耕田の排水工事をせっせと作業して、なんとか栽培は継続しているが、2012年にはそこそこ収穫できて、試作の結果は出たといえよう。

 熟期は、8月上旬であった。
サミットと同時期で、お盆の時期にはやや間に合わない。
果実が小粒だが数多く成るので、採り残した分は野鳥被害のオトリ用にいいかもしれない。

【カロラインブルー】
 カロラインブルーは、サミットよりも一週間ほど熟す時期が遅いらしい。
熟す時期が、お盆にちょうどぴったりになるようだ。
粒の大きさや味も良いみたいだ。
とはいえ試作を始めたのがやや遅かったので、オレは、まだ一粒も食べていないのだが。

 カロラインブルーは自根でもブリジッタと同じくらいによく育つ情報を得ていたが、オレの試作の結果ではやや無理であった。
発育不調気味。
休耕田で育てるなら、ラビットアイへの接ぎ木にしておく必要がある。

 カロラインの枝は伸びてきたので、穂木は確保できる見込みだ。
ラビットアイの台木には、カロラインブルーをメインで接ぎ木して、どんどん殖やして、農園の半数を占めるまでにする予定だ。
でも、そのためには、これからまた数年はかかるので、気が遠い話だ。



 あーあ、失敗つらいなあ。
1勝9敗ぐらいか。
今年から果樹園専業で生活していけると想像したが、現実は全く逆で、また派遣社員の仕事をやらねばならん。

 派遣とはいえ、10年前よりも募集も労働条件も景気がさらに悪化しているのを実感した。
ともあれ2012年は、ブルーベリーの収穫が完全に終わった9月から就職して、今頃の11月になってようやく慣れて、給料も確保した。

 あとな、1年以上前から健康が悪化して寝たきりになっていたオレの父親が、先週、亡くなった。
さっき通夜おえて、明日葬式やん、オレ長男の喪主だしよ。
親が死ぬのは、こたえるな。

 とまあ、ピンチの連続であった、というか窮地か。
しかもだ、昨日になって、10年前に一緒にブルーベリー園を始めた人が(引退して樹を売りたいと言った人とは別)、新しい店を出して忙しくなるので、農園の方はおーつ君(オレのこと)が代わりにやってくれないかと話があった。
なにしろオレの農園のすぐ隣だ。

写真
ベリーコテージの関塚さん夫婦(右奥2人)が那須高原まで遊びに
来たので、新しくブルーベリー栽培を始めるメンバーがお話し中。
9年半前の2003年4月19日撮影

 ラビットアイの熟期は遅いままだし、ハイブッシュは自根で発育が悪い。
オレは引き受けないつもりだが、このありさま、オレ以外は誰もブルーベリー園から撤退、または撤退予定ということになるのかな。
園を開いて産地化を夢見たことは、10年となって全滅の離散となるのかな。
高冷地の開拓者の末路はどうなるか、乞うご期待。

レベッカのMOONの歌詞のパクリ  レベッカ / MOONの動画
昔オレがまだ若くて、小さな苗木を抱いてた頃
夢が もっと遠くにあった頃
オレは激しく、この苗が大きくなるのを祈ってた

苗木は十年になって 不満の味を残して
失敗のリストに名前を残した

知ってるか? 何もかも
初めて植えた日のことも

壊してしまうのは 一瞬でできるから
それでも大切にしようとオレは嘆いた

知ってるさ 何もかも
初めて植えた日のことも

レベッカ MOON 歌詞
2012.11.21 記 やばい、えらく暗いわ
2012.11.22 少し校正
2012.11.30 品種情報を少し校正
作者を誉めるメールを送ってくれえ〜!
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